「注意したらパワハラと言われるのではないか」
スタッフを指導する立場の院長やリーダーから、このような声を聞くことがあります。
遅刻を繰り返している。患者さんへの対応に問題がある。決められたルールを守らない。何度伝えても同じミスを繰り返す。
本来であれば注意や指導が必要な場面でも、「強く言わない方がいい」「辞められたら困る」と考え、言うべきことを言えなくなってしまうことがあります。
もちろん、人格を否定したり、大勢の前で必要以上に叱責したりするような指導は避けなければなりません。
しかし、適切な注意や指導まで避けることが、良い職場づくりにつながるわけではありません。
今回は、パワハラを恐れて注意できなくなっている医院で考えたい、スタッフ指導のあり方について解説します。
パワハラと言われるのが怖くて注意できない
注意することと感情的に叱ることを分ける
「注意するとパワハラになる」と考える前に、注意と感情的な叱責を分けて考える必要があります。
- 人格ではなく行動について話す
- 何が問題だったのか具体的に伝える
- 感情ではなく事実をもとに話す
- 今後どうしてほしいのかを伝える
例えば、遅刻したスタッフに「あなたは本当にだらしない」と言えば、本人の人格に話が向いています。一方、「今月は始業時間への遅刻が3回ありました。診療準備にも影響するので、始業時間までに準備を終えられるよう出勤してください」と伝えれば、問題となる事実と求める行動が明確です。
注意の目的は相手を責めることではなく、問題となっている行動を改善してもらうことです。
注意しないことで真面目なスタッフが不満を持つ
問題のある行動を注意せずにいると、その本人だけの問題では済まなくなることがあります。
- ルールを守る人が損をしないようにする
- スタッフによって対応を変えない
- 問題行動を放置しない
- 組織として必要な基準を守る
例えば、一部のスタッフだけが遅刻を繰り返しているのに何も注意されなければ、時間を守っているスタッフはどう感じるでしょうか。「守らなくても何も言われないなら、自分だけ真面目にやる意味がない」と思うかもしれません。
注意を避けることは一見優しい対応に見えても、きちんと働いているスタッフに負担や不公平感を与える場合があります。管理する立場には、問題があるときに必要な指導を行い、組織の基準を守る役割があります。
「嫌われたくない」が指導を曖昧にする
注意できない理由の中には、パワハラへの心配だけでなく、「スタッフとの関係を悪くしたくない」「辞められたら困る」「嫌われたくない」という気持ちが含まれていることがあります。
そのため、「できれば気をつけてください」「今度からお願いしますね」と曖昧な伝え方になり、本人には改善が必要な問題として伝わっていないことがあります。そして同じことが繰り返されると、指導する側には不満がたまり、ある日突然強い言い方をしてしまう。これではかえって関係を悪化させます。
必要なことは、問題が小さいうちに冷静に伝えることです。一度で改善しなければ再度確認し、それでも変わらなければ段階的に指導していきます。
良い関係とは「何も注意しない関係」ではありません。問題があればきちんと伝え、お互いに仕事上必要なことを話せる関係をつくることが大切です。
指導する側にもルールをつくる
適切に注意するためには、指導する側の感覚だけに任せないことも重要です。
- 院内ルールや行動基準を明確にする
- 同じ問題には同じ基準で対応する
- 指導した内容を必要に応じて記録する
- 改善状況を継続して確認する
院長やリーダーが、その日の機嫌によって注意したりしなかったりする状態では、スタッフも何が問題なのか分かりません。また、同じ行動でもスタッフによって注意の程度が違えば、不公平感が生まれます。あらかじめ医院として守るべきルールや求める行動を明確にし、それに基づいて指導することが必要です。
「自分が気に入らないから注意する」のではなく、「医院として決めた基準から外れているから改善を求める」という状態をつくることが、指導する側にとっても重要です。

まとめ
パワハラに配慮することは当然必要です。
しかし、「パワハラと言われるかもしれない」という不安から必要な注意まで避けてしまえば、スタッフを育成する機会を失うだけでなく、ルールを守って働いているスタッフにも悪影響を与えることがあります。
大切なのは、注意するか、しないかではありません。
人格ではなく行動について、感情ではなく事実をもとに伝える。そして、何が問題なのか、今後どう改善してほしいのかを明確にします。
また、問題が小さいうちに伝え、改善状況を確認することも重要です。
スタッフを大切にすることと、何も注意しないことは違います。成長してほしいからこそ、改善すべきことは適切な方法できちんと伝える。それもスタッフ育成に必要な役割です。
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