「頑張った人には報いる仕組みを作りたい」――これは院長として自然な思いです。
努力が成果につながり、それが収入として返ってくると、スタッフのモチベーションは高まりそうに思えます。そのため、報奨金制度を導入したいと考える医院も少なくありません。しかし、実際には報奨金がうまく機能しない、むしろ逆効果を生むケースもあります。
本記事では、報奨金制度のメリットと落とし穴を整理し、医療現場に適した運用のポイントを考えていきます。
スタッフに対してのノルマや報奨金②|報奨金制度の考え方と落とし穴
報奨金制度のメリット
報奨金にはいくつかの前向きな効果があります。
- 努力が目に見える形で評価される
- スタッフの行動に具体的な動機づけが生まれる
- 短期的に成果が伸びやすい
例えば「自費診療を〇件達成したら報奨金を支給」という仕組みを設けると、スタッフが日々の行動を工夫するようになります。また、明確な評価基準として機能するため、「頑張りが正当に認められる」という納得感も得やすくなります。
報奨金制度のデメリット
しかし、報奨金にはリスクも潜んでいます。
- 個人間で不公平感が生まれる
- 数字を優先し、患者さん本位の対応が損なわれる
- 報奨金が「当たり前」となり、効果が薄れる
- 長期的にはモチベーション低下や離職につながる
たとえば、説明が得意なスタッフだけが毎月報奨金を得ていると、他のスタッフが「自分は報われない」と不満を抱くようになります。また、報奨金を得ることが目的化すると、患者さんへの提案が強引になり、医院全体の信頼を損ねる危険性もあります。
報奨金の種類と特徴
報奨金制度にはいくつかのタイプがあります。
- 売上連動型:自費診療や検査などの件数に応じて支給
- 達成型:個人やチームで設定した目標を達成すると支給
- チーム型:全体での成果に応じて分配
中でも、チーム型は不公平感を軽減しやすく、連帯感を高める効果があります。一方、売上連動型や達成型は成果が明確でわかりやすい反面、競争や分断を生みやすい点に注意が必要です。
医療現場に適した運用のヒント
報奨金を取り入れる際には、次のような工夫が効果的です。
- 短期的な刺激策ではなく、長期的な成長を意識する
- 数字だけでなく「プロセス評価」も組み込む(例:説明手順の実施率)
- 個人報奨よりもチーム報奨を重視する
- 報奨金がなくてもやる気を保てる環境づくりを並行する
報奨金は万能の仕組みではありません。むしろ「一時的なブースター」として考え、医院の文化や教育体制とセットで運用することが大切です。
報奨金に頼りすぎないことが大切
報奨金を導入すると、つい「やる気の源はお金」と考えがちです。しかし、医療の現場で長続きするモチベーションは「患者さんに感謝される」「仲間と協力して成果を出せる」といった内面的な満足感です。
報奨金はその補助として使うべきであり、中心に据えると逆効果になってしまいます。

まとめ
報奨金制度は、一見するとスタッフのやる気を高める便利な仕組みに思えますが、実際には公平性や組織風土への影響を慎重に考える必要があります。
短期的な刺激策としては有効でも、それだけに依存してしまうと、数字ばかりが優先され、医院の本質的な価値である「患者さんの信頼」が損なわれるリスクがあります。院長としては、報奨金を「万能の武器」と思わず、あくまで成長支援の一部としてバランスよく活用することが重要です。
次回は、ノルマや報奨金に代わる「健全な目標管理の方法」について解説します。
▶スタッフに対してのノルマや報奨金シリーズ:まとめページに戻る
【無料】75%公開版チェックリストをご提供中
今回の連載では、ノルマや報奨金といった「数値の扱い方」を整理し、健全な目標設定の考え方を解説しています。
その次の一歩として、経営全体を体系的に整理できる「BSC(バランス・スコアカード)75%公開版チェックリスト」を無料でご提供しています。
数値だけに偏らない経営課題の整理や、スタッフと共有できる指標づくりの土台としてぜひご活用ください。
ご希望の方は、下記より資料請求または無料相談にお進みください。
▶BSC(バランススコアカード)については、こちらのまとめからご覧ください。
▶ 「経営戦略」カテゴリの関連記事を探す
▶ カテゴリ検索・人気記事などコラムのトップへ戻る
グロースビジョンでは読み物として得た知見を、実際の医院改善に活かすための【無料ツール・サポート】をご用意しています。
先生の大切な1歩を支援します。お気軽にどうぞ。
接遇5原則チェックシート
接遇の基準をシンプルに可視化。
院内研修や個別指導に活用
満足度調査ツール 半年無料
満足度と改善点を数値化できる
E-Pサーベイが半年無料
BSCチェックリスト
医業収入UPの戦略マップづくりに
無料でも75%公開してます