クリニックを経営していると、日々の診療やスタッフ管理に追われ、税金のことは「顧問税理士に任せているから大丈夫」と考える院長先生も少なくありません。しかし、税金は単なる義務的な支払いではなく、経営そのものに大きな影響を与える重要な要素です。納税額は利益の行方を左右し、資金繰りや投資判断にも直結します。だからこそ「税金の全体像を把握する」ことは、理事長や院長にとって欠かせない経営スキルなのです。
本シリーズでは、全10回にわたりクリニックと税金の関係を体系的に解説します。まず第1回は「クリニックに関わる税金の基本」として、押さえるべき主要な税金の種類とその考え方を整理していきましょう。
クリニックの税金 ➀|クリニック経営と税金の基本
1. クリニックに関わる税金の種類
クリニック経営に関わる税金は、大きく「所得に関するもの」「消費に関するもの」「その他の付随税」に分けられます。
- 所得税(個人開業医)
個人事業主としてクリニックを経営する場合、最終的な利益に課税されます。所得控除や青色申告特別控除などを活用することで、節税の余地があります。 - 法人税(医療法人)
医療法人の場合は法人税がかかります。個人に比べて経費の幅が広がり、役員報酬や福利厚生費などを柔軟に計上できる一方、申告の複雑さは増します。 - 消費税
医療機関の保険診療は非課税ですが、自由診療(美容医療・矯正・インプラントなど)や物販は課税対象となります。この「非課税と課税の混在」が、クリニック特有の消費税リスクを生みます。 - 住民税・事業税
利益が出れば必ず負担が発生します。医療法人の場合、事業税の扱いが特殊になる点に注意が必要です。 - 固定資産税
診療所の建物や高額医療機器を所有している場合は固定資産税がかかります。
つまり、クリニック経営者にとって税金は「利益を削るもの」ではなく「経営の全方位に関わるもの」であることを理解しておく必要があります。
2. 税金が経営に与える影響
税金は、経営の意思決定に大きな影響を与えます。例えば以下のような場面です。
- 設備投資を行うと減価償却で利益が圧縮され、税額が減る
- 役員報酬を増やすと法人税は減るが、個人の所得税が増える
- 美容部門を拡大すると売上は増えるが、消費税の課税割合が増える
つまり税金は「結果」ではなく「選択次第で変動する要素」なのです。院長が税金の基本を理解していれば、経営判断をするときに「どの程度税金に影響するか」をシミュレーションできます。
3. 税金を「押さえる」だけでは不十分
多くの経営者は「いかに税金を減らすか」に意識を集中しがちです。しかし「押さえる」ことばかり考えていると、本来必要な投資まで削ってしまい、長期的には医院の成長を止めてしまいます。
税金を考えるときには「削る」だけでなく、未来に向けた取り組みを含めて予算を設計する発想が重要です。
どこに資金を残し、どこに振り向けるか――その判断こそが経営者に求められる姿勢といえます。
4. 予算思考とキャッシュフロー管理
税金を支払うためには、当然ながら現金が必要です。利益は黒字でも、資金繰りが悪ければ納税資金を捻出できずに経営が行き詰まるケースもあります。そこで重要になるのが「予算思考」と「キャッシュフロー管理」です。
- 税金の支払時期を把握し、資金繰り表に反映する
- 投資(研修・設備導入)と納税のバランスを調整する
- 利益計画と資金計画をセットで考える
こうした仕組みを整えれば、税金の支払いを「突然の出費」として慌てるのではなく、計画通りに対応できるようになります。
5. 医院が今からできる第一歩
難しく考える必要はありません。まずは以下のステップから始めることが効果的です。
- 自院に関わる税金の種類を一覧化する
- 過去3年分の納税額を確認し、年間スケジュールに組み込む
- 顧問税理士との打合せで「節税」だけでなく「投資」を話題にする
この3つを実行するだけでも、経営における税金の位置づけが大きく変わります。

まとめ
税金はクリニック経営において避けられない存在ですが、「ただ支払う義務」ではなく「経営の舵取りに直結する要素」です。所得税や法人税、消費税といった仕組みを理解し、納税を見越した資金繰りを整えることで、経営の安定度は大きく向上します。
税金を抑えることは重要ですが、同時に「どこに投資するか」を考えることが経営の質を高めます。人材育成や仕組みづくりに予算を充てれば、医院全体の成長につながり、納税後の資金力もより強固になります。
クリニックの未来を守るのは、税金を恐れることではなく、計画的に活かすことです。本シリーズを通じて「税金と経営の一体管理」を学び、強い組織づくりに役立てていただければ幸いです。
※税制は改正や解釈変更が随時行われます。必ず顧問税理士等の専門家にご確認ください。
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