「自費診療の成約率をスタッフの目標にした方がよいのではないか」
自費診療に力を入れている医院では、このような考えが出てくることがあります。
自費診療について説明した患者さんのうち、何%が自費診療を選択したのか。数字を把握すること自体は、医院経営を考えるうえで有効です。
しかし、その成約率をそのままスタッフ個人の目標にすることには注意が必要です。
「今月は成約率50%を目指してください」と求められれば、スタッフは当然その数字を意識します。その結果、患者さんに必要な情報を提供することより、「どうすれば自費を選んでもらえるか」が優先される可能性があります。
では、自費診療の成約率は見るべきではないのでしょうか。
そうではありません。
今回は、自費診療の成約率をどのように経営指標として活用し、スタッフの目標とはどう切り分けるべきかを考えてみましょう。
自費診療の成約率をスタッフの目標にするのは是か非か
医師が成約率そのものは重要な経営指標
まず、自費診療の成約率を把握すること自体には意味があります。
- 自費診療を説明した人数を把握する
- 実際に選択した人数を確認する
- 月ごとの変化を見る
- 診療・治療・施術ごとの違いを確認する
例えば、100人へ説明して20人が自費診療を選択した場合と、50人へ説明して20人が選択した場合では、同じ20件でも状況が違います。
また、以前は40%だった成約率が20%まで低下したのであれば、説明方法や患者層、提供内容などに何らかの変化が起きている可能性があります。
成約率はスタッフを評価するためだけの数字ではなく、自費診療の説明や提供体制に問題がないかを確認するための経営指標として活用できます。
個人目標にすると「売ること」が目的になりやすい
問題は、成約率をスタッフ個人のノルマのように扱うことです。
- 必要以上に自費診療を勧める
- メリットばかり強調する
- 患者さんへ決断を急がせる
- 自費を選ばなかった患者を「失敗」と考える
例えば、成約率50%が目標になっていれば、スタッフにとって自費診療を選ばなかった患者さんは数字を下げる存在になってしまいます。
しかし、十分な説明を受けた結果、患者さん自身が別の選択肢を選んだのであれば、それは必ずしも説明の失敗ではありません。
自費診療の目的は、スタッフが目標数字を達成することではなく、患者さんが必要な情報を得たうえで、自分に合った方法を選択できることです。
スタッフの目標は「結果」より「行動」にする
スタッフに目標を設定するのであれば、成約率だけではなく、その手前にある行動を見る方法があります。
- 必要な患者さんへ選択肢を説明できたか
- 患者さんの希望や不安を確認できたか
- 説明資料を適切に活用できたか
- 検討中の患者さんを適切にフォローできたか
これらはスタッフ自身が意識して改善できる行動です。
一方、「患者さんが自費診療を選択するかどうか」は、スタッフだけでは決められません。患者さんの価値観や経済状況、家族との相談など、さまざまな要因が関係します。
そのため、スタッフには適切な説明や聞き取り、フォローといった行動を求め、その結果として成約率がどう変化したのかを医院全体で確認する方が適切です。
スタッフには「患者さんが選べる環境をつくること」を求め、医院はその結果を数字で検証する。このように役割を分けて考えることができます。
成約率が低いときは「誰が悪いか」ではなく原因を見る
成約率が低下したときに、「スタッフの説明力が足りない」とすぐに判断してはいけません。
- 説明する患者層に変化はなかったか
- 費用設定に問題はないか
- 説明資料は分かりやすいか
- 患者さんが選ばなかった理由は何か
そもそも自費診療そのものが患者さんのニーズと合っていない可能性もあります。
また、医師からスタッフへの情報共有が不足していたり、説明するタイミングが適切でなかったりすることも考えられます。
成約率は「スタッフの成績表」として使うより、自費診療のどこに改善点があるのかを探すための数字として使った方が、経営改善につながります。

まとめ
自費診療の成約率を測定すること自体は、医院経営にとって有効です。
説明した患者さんのうち何人が自費診療を選択したのかを継続して確認すれば、説明方法や提供体制の変化にも気づきやすくなります。
一方、その数字をスタッフ個人の目標やノルマとして強く求めることには慎重になる必要があります。
患者さんが自費診療を選ぶかどうかは、スタッフだけで決められるものではありません。
スタッフには、必要な説明を行う、患者さんの希望を聞く、疑問を解消する、検討中の患者さんを適切にフォローするといった行動を求める。そして、その結果として成約率がどう変化したのかを医院全体で分析することが重要です。
自費診療の成約率は「スタッフを追い込むための目標」ではなく、「患者さんが納得して選べる体制になっているかを確認するための経営指標」として活用するのがよいでしょう。
一度、自院で使っている自費診療の目標を確認してみてください。「何%成約するか」だけをスタッフへ求めるのではなく、その数字につながる説明・聞き取り・フォローなどの行動まで見ていますか?
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