クリニックのリスクマネジメントシリーズ:説明と記録を仕組みにする

医療機関にとって「リスクマネジメント」という言葉は耳慣れたものかもしれません。しかし日々の診療現場においては、緊急時対応や感染対策といった大きなテーマに目が向きがちで、実際に裁判リスクを高めているのはもっと身近な部分に潜んでいることが少なくありません。

代表的なのが「説明不足」と「記録不備」です。診療内容そのものに大きな問題がなくても、患者に十分な説明がなされていなかった、あるいは記録が残っていなかったことで訴訟に発展し、数千万円規模の賠償が命じられた判例は数多く存在します。
こうした事例は、医院にとって経済的損失だけでなく、地域社会における信頼の低下やスタッフの士気低下といった長期的なダメージにつながります。

では、どうすれば「説明不足」と「記録不備」という落とし穴を避けられるのでしょうか。キーワードは 「属人化を防ぎ、仕組みに落とし込むこと」 です。

目次

リーダ説明を「属人化」から「仕組み化」へ

問題点

多くの医療機関では、患者への説明方法や内容が医師やスタッフ個人の裁量に任されているのが現状です。経験豊富な医師は丁寧に説明しますが、忙しい時や新人スタッフの場合は説明が簡略化されることも珍しくありません。さらに、口頭での説明に頼りきりで、患者の理解度を確認するプロセスが抜け落ちることもあります。

解決策

説明を仕組みに落とし込むためには以下の工夫が有効です。

このように属人化を防ぎ、説明を組織のルールとして徹底することが、トラブル防止の第一歩となります。


記録の「形式知化」

問題点

医療機関では「説明した」とカルテに一行記録されているケースが多いですが、これでは裁判で証拠として認められにくいのが現実です。曖昧な記録は、患者が「聞いていない」と主張したときに反論材料になりません。

解決策

記録を「個人の覚え書き」ではなく「組織で共有する形式知」として扱う姿勢が求められます。


組織としての対応フロー

説明と記録を仕組み化するためには、ルールや教育、振り返りの3つを柱とした対応フローが必要です。


経営的メリット

リスクマネジメントを仕組みに落とし込むことは、単なる防御策にとどまりません。

スタッフの安心感
「何を説明すべきか」「どこまで記録すべきか」が明確になれば、スタッフも不安を感じずに対応できる。。

経済的損失の回避
裁判や賠償金のリスクを未然に防ぐ。数千万単位の損失を回避できる可能性がある。

医院の信頼性向上
患者に「丁寧に説明してもらえる医院」という印象を与え、口コミや再来につながる。

業務効率化
説明方法や資料が標準化されることで、スタッフが迷わず対応でき、時間の短縮にもつながる。


医療現場のリスクマネジメントは、特別なものではなく日常の積み重ねから始まります。
説明と記録を属人化させず、仕組みに落とし込むことで、医療機関は裁判リスクを大幅に低減できるのです。

「治療は問題なかったのに裁判になってしまった」という事態を防ぐには、説明と記録を形式知化し、組織全体で共有する文化をつくることが不可欠です。これは経営を守ると同時に、患者との信頼を強化する最もシンプルで効果的な方法でもあります。

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