医療訴訟というと「治療ミス」「医療過誤」といった技術的側面が注目されがちですが、実際には説明不足によるトラブルも数多く存在します。なかでも近年増えているのが、自由診療を中心とした「費用説明」をめぐる争いです。
高額な自由診療は患者にとって大きな投資であり、期待値も高い分、費用が不透明だと一気に不信感が募ります。今回は、追加費用の説明不足が原因で医院側が請求を退けられた裁判を取り上げ、その判決が示す教訓を整理します。
医療機関の裁判シリーズ:費用説明不足で数百万の未収金が回収不能に
判例の概要
ある美容外科で手術を受けた患者が、術後に数百万円にのぼる追加費用を請求されました。患者は「事前に説明を受けていない」と反発し、支払いを拒否。これに対し医院側は「手術の過程で当然想定される追加費用であり、説明もしていた」と主張して訴訟を起こしました。
裁判所が注目したのは、事前にどの程度具体的な費用説明がなされていたか という点です。医院が提出した同意書には「追加費用が発生する可能性がある」とは記されていたものの、金額や条件は曖昧で、カルテや説明シートにも詳細な記録は残っていませんでした。
最終的に裁判所は「説明義務を十分に果たしていない」と判断し、医院側の請求を棄却。医院は数百万円の未収金を回収できず、 信用失墜という意味でも大きな痛手となりました。
判決から読み取れる教訓
今回の判例から浮かび上がるのは、「説明したつもり」では通用せず、患者が納得できる形で残された記録が重要だということです。
- 見積書の発行は必須
口頭説明だけでは不十分。治療内容ごとに分けた見積書を発行し、患者の署名を得ることが必要です。 - 追加費用の条件を具体化
「再手術時」「材料変更時」など、想定されるケースを具体的に書き残し、患者に理解を確認することが欠かせません。 - 説明の証拠を残す
カルテや説明用紙に「どのような説明を行い、患者がどう反応したか」を簡潔に記録しておくことで、裁判時の最大の防御策になります。 - 自由診療は説明責任が重い
費用が高額な分、患者は医療機関に厳格な誠実性を求めます。少しでも不明瞭さがあれば不信感に直結しやすい点を認識しておく必要があります。
経営へのインパクト
この判例は単なる法律上の問題にとどまらず、医院経営に深刻な影響を及ぼします。
- 収益への打撃
数百万円単位の未収金は、医院の年間収益に大きな穴を開けます。特に中小規模の医療法人では経営を揺るがしかねません。 - スタッフの士気低下
トラブル対応や裁判は現場スタッフに精神的負担を与えます。「また同じことが起きるのでは」という不安が離職にもつながります。 - 患者離れと新規獲得の難化
口コミやSNSで「費用トラブルのある医院」と認識されれば、紹介や新患獲得に直結します。広告やキャンペーンを行っても信頼回復には長い時間がかかります。
医療機関が取るべき対応策
では、同様のトラブルを防ぐために、医療機関はどのような仕組みを導入すべきでしょうか。
スタッフ教育の徹底
説明は院長やドクターだけでなく、受付やコーディネーターも関わります。全スタッフが共通の言葉で説明できるよう研修を行うことが重要です。
費用説明チェックリストの導入
初診時に費用説明のチェックリストを使い、説明漏れを防ぎます。
書面と電子記録の二重化
見積書や同意書を紙で残すだけでなく、電子カルテや専用ソフトに保存して証拠性を強化します。
追加費用発生時の即時対応
治療中に追加費用が必要になった場合、その場で新たな見積書を発行し、患者の署名を得るフローを必ず組み込みます。

まとめ
今回の判例は、医療機関にとって「費用説明がいかに重い責任を伴うか」を改めて示しました。患者は治療技術そのものよりも、「納得できる説明があったかどうか」で信頼を判断します。
費用説明を軽視すると、数百万円規模の未収金だけでなく、評判や信頼の失墜という取り返しのつかない損失を招きます。反対に、丁寧な説明と確実な記録は、患者満足度を高め、医院経営を守る最大の武器となります。
さらに、費用説明を徹底することは、患者との信頼関係を強固にし、リピート率や紹介患者の増加にもつながります。
「費用に安心できる医院」という評価は、競合との差別化にも直結するのです。
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