医療裁判というと、多くの方は「医師の治療ミス」や「説明不足」が原因だと考えがちです。しかし実際には、受付や電話対応などのスタッフの日常的な言葉遣いや態度が火種となり、トラブルが訴訟へ発展するケースも少なくありません。
患者にとって、最初に接する受付やスタッフは「医院の顔」です。どんなに治療技術が高くても、応対が冷たければ「安心して任せられない」と感じ、信頼を失います。そこで重要なのは、接遇や苦情対応をスタッフ個人の裁量に任せるのではなく、医院全体の仕組みとして定着させることです。
クリニックのリスクマネジメントシリーズ:スタッフ対応と苦情処理を仕組みにする
接遇の標準化が必要な理由
- 医院の印象は応対で決まる
患者が医院に抱く印象の大半は、医師の腕よりも日常的なやり取りによって形成されます。 - 一人の態度が全体に波及する
冷たい言葉や無愛想な態度は、患者に「この医院は不誠実だ」と思わせ、医院全体の評価を下げます。 - トラブルの火種は小さな不満から
待ち時間や費用などの不満がすでに溜まっているとき、対応の一言が爆発点となることがあります。
このように、接遇はサービスの一環ではなく、リスクマネジメントの根幹と捉える必要があります。
苦情対応を仕組みに落とし込む方法
1. 苦情対応マニュアルの整備
基本フローは「傾聴 → 謝意 → 解決提案」。
「そんなこと言われても困ります」のような突き放しを防ぐため、あらかじめ対応ルールを明文化。
簡潔なマニュアルを受付やスタッフルームに掲示しておくと、実務で活用しやすい。
2. ロールプレイ研修の実施
実際に起こり得る場面をシナリオ化し、スタッフ同士で演習。
「患者役」と「スタッフ役」を交代で行い、現場感覚を養う。
経営者やリーダーがフィードバックすることで改善点を共有できる。
3. 苦情記録の徹底
苦情を受けた日時・内容・対応者を必ず記録する。
記録は「再発防止の学び」になり、同じトラブルを繰り返さないための財産となる。
記録は月例のミーティングで共有し、改善策を議論する。
リーダー配置とエスカレーションルール
苦情が大きくなった場合に現場スタッフだけで対応しようとすると、判断に迷ったり感情的なやり取りになったりするリスクがあります。そのため、必ず責任者が関与するルールをあらかじめ設けておくことが重要です。
具体的には「対応に迷ったらリーダーにエスカレーションする」という仕組みを整えておくと、スタッフは不安を抱えずに対応できます。
リーダーは単にトラブル処理の矢面に立つだけでなく、対応事例を整理し、院内で共有して次回以降の教育やマニュアル改善に役立てる役割も担います。こうした流れを確立しておくことで、現場の負担を減らしながら医院全体としての対応力を高めることができます。
経営的メリット
医院文化の醸成
誠実な対応を全員で徹底することが医院の文化となり、日常的にトラブルを未然に防げるようになります。
裁判リスクの低減
誠実な対応が徹底されていれば、患者が不満を感じても「訴訟にまで発展する」可能性は大幅に下がります。
医院の信頼性向上
「ここは話を聞いてくれる」「安心して相談できる」という印象は口コミにつながり、患者の紹介や再来院を生みます。
スタッフの安心感
マニュアルやルールが明確になれば、スタッフは萎縮せずに自信を持って応対できます。これは離職防止にも有効です。

まとめ
医療機関を訴訟リスクから守るには、診療技術や記録だけでなく、スタッフの日常対応を仕組みに落とし込むことが欠かせません。
「接遇研修」「苦情対応マニュアル」「記録と共有」「リーダー関与」といった仕組みを整えることで、トラブルが裁判に発展するリスクを大幅に下げられます。これは単なる“サービス向上”ではなく、医院を守り信頼を高めるための戦略的な投資です。
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