「スタッフにもっと経営意識を持ってほしい」
「どうして自分と同じように医院のことを考えてくれないのだろう」
院長から、このような話を聞くことがあります。
患者さんを増やしたい。もっと良い医院にしたい。売上を伸ばしたい。スタッフにも成長してほしい。
院長は診療が終わった後も医院のことを考え、休日にも経営について悩んでいるかもしれません。
一方、スタッフは勤務が終われば仕事から離れ、休日はプライベートを大切にする。
その姿を見て、院長が「仕事に対する意識が低い」と感じることもあるでしょう。
しかし、経営者である院長と雇用されて働くスタッフの仕事に対する価値観が違うのは、ある意味当然です。
今回は、この違いをどう受け止め、医院経営やスタッフ育成につなげればよいのかを考えてみましょう。
院長とスタッフの「仕事に対する価値観」が違うのは当たり前
院長とスタッフでは背負っているものが違う
まず理解しておきたいのは、院長とスタッフでは仕事に対する立場そのものが違うということです。
- 院長は医院経営に責任を持っている
- スタッフは担当する仕事に責任を持っている
- 収入やリスクの構造も違う
- 仕事が生活に占める割合も人によって違う
院長にとって医院は、自分自身の人生や将来にも直結する存在でしょう。売上が下がれば不安になりますし、スタッフが退職すれば休日でもそのことを考えるかもしれません。しかし、スタッフに同じ感覚を求めることには無理があります。
立場が違えば、仕事に対する責任の範囲や熱量が違うことは自然なことです。
「仕事を最優先にしない=やる気がない」ではない
仕事に対する価値観は、人によって大きく異なります。
- 仕事そのものにやりがいを求める人
- 専門性を高めたい人
- 安定した収入を重視する人
- 家庭や趣味との両立を大切にする人
どれか一つが正しいわけではありません。定時になれば帰りたい、休日は仕事のことを考えたくないというスタッフでも、勤務時間中に自分の役割をきちんと果たしているのであれば、それだけで仕事への意識が低いとは言えません。
反対に、「仕事が大好きです」と言っていても、任された仕事をきちんと行わなければ困ります。
仕事への熱量ではなく、勤務中に求められる役割を果たしているかを見ることが大切です。
価値観を合わせるより「仕事の基準」を合わせる
院長とスタッフの価値観を完全に一致させる必要はありません。
仕事に何を求めるのかは、それぞれ違っていてよいでしょう。
しかし、医院で一緒に働く以上、共通にしなければならないものがあります。
それが仕事の基準です。
患者さんにはどのように対応するのか。報告・連絡・相談をどこまで行うのか。時間やルールをどう守るのか。自分の役割として何を達成するのか。
こうした基準については、個人の価値観とは分けて考える必要があります。
「私は仕事よりプライベートを大切にしています」という考え方は自由ですが、それを理由に勤務中の仕事を疎かにしてよいわけではありません。
価値観まで同じにしようとするのではなく、仕事として守るべき基準をそろえる。その方が現実的な組織運営につながります。
院長の価値観を押しつけるのではなく方針を伝える
院長にも、医院を経営するうえで大切にしている考えがあるでしょう。
- どのような医療を提供したいのか
- 患者さんにどう接してほしいのか
- どのような医院をつくりたいのか
- スタッフに何を期待しているのか
これらをスタッフへ伝えることは重要です。ただし、「自分と同じように考えてほしい」と求めることとは違います。院長が休日まで医院のことを考えているからといって、スタッフにも同じことを求める必要はありません。
一方で、「当院では患者さんへの説明を大切にする」「スタッフ同士で困っている人がいれば協力する」といった医院としての方針は共有する必要があります。
院長個人の仕事観を押しつけるのではなく、医院として大切にする価値観を言葉にして伝えることが重要です。

まとめ
院長とスタッフでは、立場も責任も違います。仕事に対する価値観や熱量が違うのは当然です。
大切なのは、スタッフに院長と同じ仕事観を求めることではありません。
仕事に何を求めるかはそれぞれ違っても、患者さんへの対応、院内のルール、自分の役割など、仕事として守るべき基準は共有する必要があります。
院長の価値観を押しつけるのではなく、医院として大切にする考え方を伝え、違う価値観を持つスタッフが同じ方向へ仕事をできる環境をつくりましょう。
一度、自院を振り返ってみてください。スタッフに仕事上必要な行動を求めているのか、それとも院長と同じ熱量まで求めてしまっていませんか?
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