これまでのシリーズでは、患者・スタッフ・組織を対象に心理学を活用する方法を見てきました。
最終回は、院長ご自身に焦点を当てます。
クリニックの経営者として日々判断を重ねる院長は、常に目に見えないストレスやプレッシャーにさらされています。心理学的なセルフケアを取り入れることで、その重圧を整理し、安定したリーダーシップを発揮できるようになります。
院長自身の心理マネジメント
1. 経営者が抱える心理的プレッシャー
院長は「診療」と「経営」の二重の役割を担っており、その負担は非常に大きいものです。
- 毎日の診療に加え、スタッフ・設備・財務などの管理責任を背負う
- 成功も失敗もすべて自分の判断に帰属するという重圧
- 経営に関する悩みや不安を簡単にはスタッフに相談できない孤独感
こうしたストレスは自然なものであり、弱さではありません。むしろ「経営者である以上、誰もが抱える当然の課題」として認識することが第一歩です。さらに、この重圧を言語化し自覚するだけでも、漠然とした不安が和らぎ、冷静に次の一手を考える余裕が生まれます。
2. セルフモニタリングで心を整える
心理学的に有効なのが「セルフモニタリング」です。自分の感情や思考を客観的に観察することで、感情に流されず冷静な判断を保ちやすくなります。
実践方法の例
- 週に1回、自分の気分を10段階で評価して記録する
- イライラした出来事を書き出し、その原因を言語化する
- 気持ちの変化をグラフ化し、自分の傾向を把握する
「今の自分は疲れている」「焦っている」と気づくだけで、不要な衝突や誤った判断を避けられます。さらに、モニタリングの記録を振り返ることで「自分は回復できる」という実感を得られ、セルフケアのモチベーションにもつながります。
3. ストレスコーピング(対処法)の活用
ストレスに直面したときに「どう対処するか」を心理学ではストレスコーピングと呼びます。
有効な方法
- 認知的再評価:うまくいかない=自分の責任、と短絡的に捉えず、「今回は学びの機会」と視点を変える
- ソーシャルサポート:信頼できる外部パートナー(同業の院長や顧問、コンサルタント)に相談し、孤独を減らす
- マイクロレスト:1日5分の小休憩で意識的に脳をリセットする
ストレスはなくすものではなく、上手に「受け止め方を変える」ことが重要です。コーピングを複数持っておくことで、状況に応じて柔軟に対応でき、院長としての持続力を高められます。
4. 境界線を意識する
「院長としての自分」と「一人の人間としての自分」を切り分けることも大切です。
- プライベートな時間を意識的に確保する
- 休日や趣味の時間を「経営と切り離した空間」として守る
- 家族や友人との会話で「経営者以外の自分」を取り戻す
心に余裕を持つことは、結果的に判断の質を高め、クリニック全体に良い影響を与えます。特に「経営者は休んではいけない」という思い込みを外し、自分自身のリズムを守ることが、長期的に安定した経営判断につながります。
5. 院長自身の心の安定が組織を支える
院長の心理状態は、そのままクリニック全体の雰囲気に波及します。
- 院長が焦っていれば、スタッフも不安になる
- 院長が落ち着いていれば、スタッフも安心して働ける
つまり「自分を整えること」は、最も効果的なリーダーシップです。
プレッシャーがかかる時こそ論理的思考やBSCのような“型”を活用することが有効です。 感情に流されず、フレームワークに沿って考えることで冷静さを取り戻せます。そして、そのプロセスをサポートしてくれるコンサルタントや外部パートナーの存在も、院長にとって大きな安心材料になります。

まとめ
・院長の心理マネジメントは「贅沢」ではなく「経営に必須の投資」である
・セルフモニタリングで感情を客観視し、心の状態を把握する
・ストレス対処法を活用し、消耗を防ぐ
・境界線を意識して「院長」と「自分」を切り分ける
・型や外部サポートを取り入れることで、冷静で安定した判断を下せる
院長が自分を整えられることは、スタッフ・患者・組織すべてにとって最大の安心につながります。
日々多くの重圧を抱えながらも、現場と経営を支え続けている院長の努力は本当に大きな価値を生んでいます。
どうかご自身の健康と心の安定を最優先にしながら、これからも安心できるリーダーシップを発揮してください。
これで「クリニックと心理学」全5回シリーズは完結です。
患者さん・スタッフ・組織・院長という4つの視点を心理学でつなぐことで、クリニック経営はより安定し、持続的な成長が可能になります。
▶クリニックと心理学 シリーズ(全5回)のまとめページに戻る
【無料】75%公開版チェックリストをご提供中
今回の連載では、ノルマや報奨金といった「数値の扱い方」を整理し、健全な目標設定の考え方を解説しています。
その次の一歩として、経営全体を体系的に整理できる「BSC(バランス・スコアカード)75%公開版チェックリスト」を無料でご提供しています。
数値だけに偏らない経営課題の整理や、スタッフと共有できる指標づくりの土台としてぜひご活用ください。
ご希望の方は、下記より資料請求または無料相談にお進みください。
▶BSC(バランススコアカード)については、こちらのまとめからご覧ください。
▶ 「経営戦略」カテゴリの関連記事を探す
▶ カテゴリ検索・人気記事などコラムのトップへ戻る
グロースビジョンでは読み物として得た知見を、実際の医院改善に活かすための【無料ツール・サポート】をご用意しています。
先生の大切な1歩を支援します。お気軽にどうぞ。
接遇5原則チェックシート
接遇の基準をシンプルに可視化。
院内研修や個別指導に活用
満足度調査ツール 半年無料
満足度と改善点を数値化できる
E-Pサーベイが半年無料
BSCチェックリスト
医業収入UPの戦略マップづくりに
無料でも75%公開してます

