「院長、ちょっとお話があるんですが…」
ある日の勤務後、スタッフにそう声をかけられたとき、多くの院長が直感します。
「あ、これは退職の話だな」と。
退職の申し出は、感情的にも業務的にもインパクトのある出来事です。
しかし同時に、スタッフの退職はごく自然なことでもあります。
だからこそ、揉めずに、後に引きずらず、そして残ったスタッフの信頼も守る対応が求められます。
今回は、退職申し出への初期対応から、引き継ぎ、周囲への説明まで、「もめない退職の進め方」を院長・リーダーの視点から整理します。
もめない退職のススメ──「辞めたいんですけど…」から始まる上手な対応法
1. 「辞めたいです」と言われたとき、最初にかけるべき言葉
スタッフから「退職したいんです」と言われたとき、多くの院長は内心で動揺します。
「急すぎる…」「なぜ今?」「辞められたら困る」
そんな感情が湧き上がるのは当然ですが、最初の一言で印象は大きく変わります。
おすすめは、以下のような落ち着いた対応です:
「そうなんですね。まずはお話を聞かせてください。」
ポイントは、「引き留める」「否定する」「感情的に反応する」を避けること。
まずは一歩引いた姿勢で、本人の意向を丁寧に受け止めるところから始めましょう。
2. 退職理由の“本音”を探りすぎない
退職理由を聞くことは必要ですが、問い詰めるような形で深堀りするのは逆効果です。
「本音を言ってもどうせ引き止められる」と構えているスタッフも多いため、安心して話せる雰囲気づくりが重要です。
たとえば:
- 「人間関係」→「これ以上傷つきたくない」
- 「やりたいことがある」→「今の職場に限界を感じている」
このように、本音にはデリケートな背景があることも少なくありません。
無理に引き止めるのではなく、状況の共有や退職時期・引き継ぎの話へ自然に進めていくことが大切です。
3. 退職を“事件”にしないための、院長の立ち位置
退職の話は、院長やリーダーにとっては「組織としてどう向き合うか」が問われる場面でもあります。
とくに注意したいのは、退職者の“個人問題”に矮小化しないこと。
感情的になり、「あの人は無責任だ」などと感じたとしても、口に出してしまうと組織の信頼性を損ないます。
院長としての立ち位置はあくまで「公正な調整役」。
本人が気持ちよく去り、残ったスタッフも安心して働けるようにする「着地」が大切です。
4. 引き継ぎ・最終日までの流れを明文化する
もめごとを避けるためには、「いつまでに、何を、どう進めるか」を明確にしておく必要があります。
たとえば:
- 退職届の提出日と最終出勤日
- 有休消化の有無・残日数の確認
- 引き継ぎすべき業務と資料の整理
- 最終日までの勤務態度に関する期待(患者さん対応・言動など)
可能であれば、簡単な「退職確認シート」や「引き継ぎリスト」を用意しておくと、スムーズな進行と証拠保全に役立ちます。
5. 残ったスタッフへの伝え方が組織の空気を決める
退職者との関係だけでなく、その後が組織にとってはさらに重要です。
残ったスタッフにとって「誰がどう辞めたか」は、職場の信頼性や自分の将来像に大きく関わります。
そのため、次のようなポイントを押さえて説明しましょう:
- 【事実だけ】をシンプルに伝える:「◯月末で退職することになりました」
- ネガティブな理由には触れない:「円満に話し合いをして決まりました」
- 感謝の言葉で締める:「これまでの貢献に感謝しています」
- 今後の体制を説明する:「引き継ぎは〇〇さんと進めています。心配しないでください」
ここで「突然辞めるなんて迷惑」といった発言があると、職場に不安が広がり、離職の連鎖にもつながります。
院長が冷静かつ前向きな姿勢で話すことが、組織の安定を支えます。
6. 円満退職が次の採用や評判に影響する
クリニックの世界は意外と狭く、元スタッフがどこかで話す言葉が、採用や風評に影響することもあります。
「対応が冷たかった」「無理やり辞めさせられた」といった印象を与えれば、SNSや口コミで思わぬ形で伝わるリスクもあります。
だからこそ、院長としての最後のメッセージはとても重要です。
「ここで働いて良かった」
「ちゃんと話を聞いてもらえた」
そう感じてもらえるように、最後のやり取りこそ丁寧に行いましょう。

まとめ|退職対応は“組織力”の見せどころ
スタッフの退職は、誰にとっても気持ちの良い話ではありません。
ですが、「辞める=裏切り」「迷惑」といった感情で対応してしまうと、院内の信頼や空気が一気に悪化します。
退職を通じて大切なのは、“残るスタッフの信頼を守ること”。
そのために、冷静に・整然と・誠実に向き合う姿勢が求められます。
組織の質は、「人が辞めるとき」に最も表れます。
もめずに終えることは、次のステップに向かう医院にとって最大のプラスになるのです。
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