事務長を迎えたからといって、すぐに全業務を任せられるわけではありません。
業務移譲には段階があり、その進め方を間違えると、事務長本人も混乱し、院長との信頼関係にもひびが入ります。
さらに、任せすぎによる管理不行き届きが、思わぬリスクを招くこともあります。
今回は、事務長への業務移譲をスムーズかつ安全に進めるためのポイントを解説します。
クリニックの事務長シリーズ➁──任せ方と管理のバランス
1. 移譲の基本原則
事務長への業務移譲は「小さく始め、大きく育てる」ことが鉄則です。
まずは業務の一部を任せ、結果を確認しながら範囲を広げていきます。
移譲の際は以下の3原則を押さえましょう。
- 目的を共有する:業務の背景や最終ゴールを説明する
- 成果基準を明確にする:数値や行動基準で評価できる状態にする
- 報告ルールを決める:週次・月次で報告の形と内容を固定する
2. 段階的な移譲ステップ
- 補佐から始める
院長や既存責任者と一緒に業務を行い、流れを理解してもらう。 - 部分的な担当
特定の分野(例:物品管理、シフト作成)を一任する。 - 成果責任の付与
数値目標や改善案の提出を求め、結果まで責任を持たせる。 - 全体統括
複数分野を束ね、現場全体の改善・運営を任せる。
3. 任せすぎによるリスクと管理の必要性
事務長による横領事件は全国的に後を絶ちません。長年勤務し信頼されていた人物によるケースも多く、発覚までに数年を要することもあります。
「信頼しているから任せきり」は、院長として危険な判断です。
任せることと、監督を放棄することは別物です。以下のような管理を習慣化しましょう。
- 銀行明細と帳簿の月次照合を院長自身が確認
- 支払や振込には必ず二重承認を設定
- 年1回以上の外部監査や税理士チェックを活用
これらは不信感を示す行為ではなく、健全な組織を守るための基本です。
4. 信頼関係を損なわない管理のコツ
- 管理ルールは事務長就任時に「医院の標準ルール」として提示
- 点検や承認は“抜き打ち”ではなく“定期ルーティン”として行う
- 管理項目を「事務長の仕事の一部」と位置づけ、負担感を減らす
こうすることで、事務長本人も「院長が自分を監視している」のではなく「組織の仕組みとして行っている」と理解できます。
5. 管理と信頼のバランスが医院を守る
事務長に業務を任せる最大の目的は、院長が診療や戦略に集中できる時間を増やすことです。
しかし、そのために医院の財務や情報を完全に一任してしまえば、思わぬリスクを招く可能性があります。
信頼と管理を両立させることが、長期的な組織安定の鍵です。

まとめ
事務長への業務移譲は、スモールスタートと段階的な拡大が基本です。
そして、信頼を前提にしながらも、金銭や重要データは必ず院長が定期的に確認する仕組みを残すこと。
この「任せる」と「管理する」のバランスこそが、事務長と院長の健全な関係を保ち、医院を守る土台となります。
次回は「事務長の評価制度と成長支援の方法」を解説し、事務長を組織の要として育てるポイントをご紹介します。
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