クリニックのリスクマネジメントシリーズ:情報漏洩リスクへの備え

患者カルテや検査結果、レントゲン画像は、患者にとって最もセンシティブな個人情報です。これらが一度漏洩すれば取り返すことはできず、金銭的賠償だけでなく社会的信用の喪失に直結します。

実際に、FAXの誤送信やUSBの紛失が原因で訴訟に発展し、数百万円規模の損害賠償と大きな信頼失墜につながった裁判例も存在します。情報漏洩は「誰にでも起こり得るリスク」であり、ゼロにすることは不可能です。しかし、日常的にどれだけリスクを最小化する努力を行っているかが、訴訟や監査で問われます。

今回は、クリニックが情報漏洩リスクに備えるための具体的なリスクマネジメントを整理します。


目次

1. 規程と仕組みの整備

情報管理の第一歩は、規程を明文化し仕組み化することです。例えば「USBや外部記録媒体の院外持ち出し禁止」「メールやFAX送信は必ずダブルチェック」「紙カルテの保管・廃棄ルール」などを規程化し、全スタッフに徹底周知する必要があります。

加えて、電子カルテやサーバーのアクセス権限を最小限に設定し、業務上必要な人のみが情報に触れられる体制を作ることが欠かせません。ルールを紙にまとめて配布するだけでは不十分で、日常業務の中に仕組みとして組み込むことがポイントです。

規程があっても「使われなければ意味がない」ため、実際の業務に落とし込む工夫が不可欠です。たとえば、送信時に自動で宛先確認画面を表示させるシステムや、廃棄記録を残すチェックシートなど、小さな仕掛けを組み合わせることで、日常的に規程が機能します。


2. 教育と文化づくり

どれほど完璧な規程があっても、現場で守られなければ意味がありません。医療機関でよくある失敗は「研修を1回実施して終わり」というケースです。情報管理は一度教えたから定着するものではなく、継続的な教育と、職場全体の文化づくりが必要です。

年1回以上の研修に加え、朝礼や定例会議での声掛け、事例紹介を通じて繰り返し意識を高めることが大切です。院長や幹部自身が率先してルールを守る姿勢を示すことが、文化として根付かせる最大の要因になります。

スタッフは「上が守っていないルールは形だけ」と感じます。逆に、院長や幹部が徹底していれば現場も自然に従うものです。教育は知識伝達に留まらず、組織風土として「守るのが当たり前」という雰囲気を作ることが狙いです。


3. 証跡と検証の仕組み

情報漏洩リスクはゼロにはできません。だからこそ「適切に管理していた」ことを示す証跡が重要です。送信記録や廃棄記録を残し、インシデント対応の履歴をまとめておくことで、万一訴訟になった際に過失を否定する強力な証拠となります。

また、内部監査を年1回実施し、外部の目で運用状況を点検することで、形骸化を防げます。小さなミスも記録し改善する「インシデントログ」は、再発防止と訴訟リスク低減の両面で役立ちます。

裁判で問われるのは「管理していたかどうか」ではなく「管理努力を証明できるかどうか」です。小さなログでも積み重ねれば、リスク管理を真剣に行っていた証拠となり、医院を守る力になります。


4. 外部の認証制度活用

内部努力に加え、第三者からの認証を受けることで、対外的な信頼性は格段に高まります。特に個人情報保護に関する認証は、患者や取引先に「この医院はしっかり情報管理している」と示す効果が大きいです。弊社では医療機関向けに「JAPHICマークメディカル」の取得を推奨しており、外部認証を通じて医院の情報管理体制を客観的に証明することができます。単なる内部ルールだけではなく、第三者の視点を取り入れることで、リスクマネジメントが一層実効性を持ちます。

内部努力は「自称」で終わりがちですが、外部認証は客観的証明になります。認証取得は負担もありますが、その分「見せられる強さ」が生まれ、訴訟やトラブル時に大きな信頼性を発揮します。

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情報漏洩は一度のミスで経営全体を揺るがします。金銭的賠償はもちろん、報道やSNS拡散による社会的信用の喪失は数年単位で尾を引き、患者離れや採用難につながります。

だからこそ「規程と仕組み」「教育と文化」「証跡と検証」「外部認証」という4本柱をバランスよく整えることが必須です。特に大切なのは「文化づくり」です。規程や仕組みがあっても現場で守られなければ意味がなく、院長や幹部が率先して実行することで初めて機能します。また、訴訟になった際には「努力の証跡」が防御の鍵を握ります。

さらにJAPHICマークメディカルなどの第三者認証を活用すれば、内部体制を客観的に示し、外部への信頼性も高められます。リスクをゼロにすることは不可能ですが、最小化する努力を積み重ねることが、患者の信頼と医院の持続的発展を守る唯一の道です。

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