クリニックのリスクマネジメントシリーズ:リスクを“管理”から“文化”へ

これまで9回にわたり、クリニックの現場で起こりうるリスクやトラブルを、実例を交えながら掘り下げてきました。
スタッフの行動や情報の扱い方、院内での連携ミス、患者トラブルへの対応――。
それぞれのテーマで共通して見えてきたのは、「ルールがあっても、運用されなければ意味がない」という現実でした。

最終回となる今回は、その一歩先を考えます。
それは「リスクマネジメントを仕組みで終わらせず、文化として根づかせる」という視点です。
この“文化化”こそが、安心・安全な医療を継続するための最大の鍵です。


目次

1. 「管理」から「文化」へ ― 成熟した組織の条件

多くの医院では、トラブルが起きたあとに「再発防止策」を検討します。
チェックリストを整備し、ヒヤリハット報告書をつくり、スタッフに注意喚起を行う。
これはもちろん重要ですが、これだけでは“管理”の域を出ません。

「文化」とは、誰かが指示を出さなくても自然と行動できる状態を指します。
報告がルールだから行うのではなく、患者さんを守るために当然のこととして行動できる
それが、医療機関におけるリスクマネジメントの最終形です。

文化として根づいた医院では、

こうした空気が当たり前にあります。
このような文化を育てるには、仕組み以上に「人の意識」と「信頼関係」が求められます。


2. 院長・リーダーが果たすべき役割

リスクマネジメントを文化として根づかせるために、院長・リーダーの姿勢は決定的です。
スタッフが安心して発言できる環境をつくること、そしてその発言に耳を傾けること。
どんな立派なマニュアルよりも、トップの受け止め方が医院の安全性を左右します。

以下の3つの姿勢が、文化づくりの出発点になります。

①「報告=責任」ではなく「報告=信頼」
ミスやヒヤリハットを報告したスタッフを責めると、次から誰も言わなくなります。
報告してくれたこと自体を評価し、感謝を伝えることで、報告文化が根づきます。

②「一緒に考える」姿勢を持つ
「どうしてミスしたのか」ではなく「なぜ仕組みで防げなかったのか」を共に検討します。
個人の問題から組織の課題へと視点を上げることがポイントです。

③「成功事例も同じ熱量で共有する」
問題の共有だけでなく、「未然に防げた」「患者対応が素晴らしかった」といった事例を褒めて広める。
“良い文化”は成功事例の共有から育ちます。


3. ヒヤリハットが生まれない組織を目指して

ヒヤリハット報告は「ミスを防ぐため」にあるものですが、最終的な理想は“報告すら必要ない状態”です。
つまり、リスクが発生する前にチーム全員が察知し、未然に防げるレベルまで高めること。
これが「文化としてのリスクマネジメント」です。

たとえば、受付スタッフが患者さんの表情から不満を感じ取って声をかけたり、
衛生士が治療後に少し違和感を覚え、即座に確認を行う。
それぞれが「異変を感じたらすぐ動く習慣を持つ医院は、結果的に事故も少なく、職場の雰囲気も穏やかです。

また、ヒヤリハットを共有しても「誰が悪いか」ではなく「どうすれば再発を防げるか」に焦点を当てることで、
スタッフが安心して意見を出せるようになります。
この“心理的安全性”の確保が、医療安全文化を定着させるための基盤となります。


4.トラブルが減ると信頼が増える ― 経営的な副産物

リスクマネジメントが文化として根づくと、医院の“空気”が変わります。
ミスが減るだけでなく、報連相がスムーズになり、患者対応の質も向上します。
その結果、クレームが減り、スタッフの離職率も下がる。
つまり「医療安全の徹底」は、経営安定に直結する投資でもあります。

一方で、表面的なルールだけを整えた医院は、「うちは大丈夫」という油断が生まれがちです。
安全文化を育て続けるためには、定期的な見直しと院長自身の発信が欠かせません


リスクマネジメントとは、単にトラブルを防ぐための管理手法ではありません。
それは「患者さん・スタッフ・地域の信頼を守るための経営」そのものです。
仕組みを作るだけではなく、行動や思考が“安全文化”として根づいたとき、
クリニックは初めて「信頼され続ける組織」へと成長します。

これまで9回にわたるシリーズを通して見えてきたのは、
リスクとは“起きるもの”ではなく、“防げるもの”であるという考え方です。

その考えを、医院全体で共有できるかどうか――。
それが、これからの医療経営を左右する最も大きな分かれ道になるでしょう。

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