スタッフ数が少ないうちは、院長とスタッフの話し合いだけで勤務条件や給与について決めている医院もあります。
「残業した場合はこうする」「昇給は毎年このくらい」「有給休暇はこのように取ってもらう」など、明文化されていなくても、お互いに分かっているつもりで運営できることもあるでしょう。
しかし、スタッフが増えたり、入退職が繰り返されたりすると、「聞いていた話と違う」「あの人だけ条件が違う」といった問題が起こりやすくなります。
就業規則や給与規則は、単に決まりを増やすためのものではありません。医院とスタッフ双方が安心して働くための共通ルールです。
今回は、就業規則や給与規則が曖昧な医院で起こる問題について考えてみましょう。
就業規則や給与規則が曖昧な医院で起こる問題
人によって説明が違ってしまう
明確なルールがなければ、そのときの判断によって対応が変わります。
- 勤務時間や休日のルールを明確にする
- 遅刻や欠勤時の扱いを統一する
- 有給休暇などの運用方法を共有する
- 入職時の説明内容を統一する
例えば、以前のスタッフには認めていたことを、新しいスタッフには認めないということが起これば、「なぜ自分だけ」と不満につながります。院長に悪意がなくても、その都度判断していると対応に差が生まれます。
誰が説明しても同じ回答になる状態をつくることが、スタッフからの信頼にもつながります。
給与の決め方が曖昧だと不公平感が生まれる
給与は、スタッフにとって特に関心の高い問題です。
- 基本給や各種手当の考え方を整理する
- 昇給の基準を明確にする
- 評価と給与の関係を説明する
- 個別の例外を増やし過ぎない
例えば、長く勤務しているスタッフが「なぜ後から入った人と給与がほとんど変わらないのか」と感じることがあります。採用時の人材不足などから個別に条件を設定した結果、既存スタッフとのバランスが崩れるケースもあります。
すべての給与を同じにする必要はありませんが、「なぜ違うのか」を説明できる基準を持っておくことが重要です。
「昔からのルール」が増えるほど複雑になる
医院を長く運営していると、さまざまな事情から例外的なルールが生まれます。
「このスタッフだけは以前からこの勤務時間」「この手当は○○さんには付いている」「以前の院長との約束でこの条件になっている」など、一つひとつには理由があったとしても、それが積み重なると全体のルールが分かりにくくなります。
さらに問題なのは、その経緯を知っている人が退職すると、なぜそのルールがあるのか分からなくなることです。
スタッフが増えれば、過去の事情を知らない人も増えていきます。その結果、「人によって違う」「院長に言えば変わる」と受け取られ、組織への不信感につながることがあります。
定期的に現在の運用と規則を照らし合わせ、実態と合っていない部分や不要になった例外を整理することが必要です。
ルールは作った後の運用が重要
就業規則や給与規則は、作成して保管しておくだけでは十分ではありません。
- 現在の運用と規則が一致しているか確認する
- 制度変更に合わせて見直す
- スタッフへ必要な内容を周知する
- 判断に迷ったときに規則へ戻る習慣をつくる
立派な就業規則があっても、実際には院長やスタッフが内容を把握しておらず、その場の判断で運用していれば意味がありません。また、医院の勤務体制や給与制度が変わったのに、昔の規則がそのまま残っていることもあります。
ルールを実際の医院運営に合わせ、必要に応じて専門家へ確認しながら継続的に見直すことが大切です。

まとめ
就業規則や給与規則が曖昧でも、スタッフが少なく関係性が良いうちは大きな問題が起こらないかもしれません。しかし、スタッフが増え、世代や働き方、雇用条件が多様になるほど、口約束やその都度の判断では対応が難しくなります。
特に注意したいのは、院長に不公平に扱う意図がなくても、ルールが曖昧なことでスタッフには「人によって扱いが違う」と見えてしまうことです。就業規則や給与規則を整える目的は、スタッフを縛ることではありません。
医院とスタッフ双方が共通の基準を持ち、迷ったときに戻れる場所をつくることです。
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