小児患者さんにとって、診療は「知らない大人」「見慣れない器具」「独特な音」「痛いかもしれない場面」が重なり、不安が一気に高まる環境です。特に受付やはじめの声掛けは、緊張の度合いを左右する大切な時間。
小児患者さんは大人よりも感情がストレートに言動へ表れるため、ちょっとした言葉の選び方が「ここは怖くない場所」と感じてもらう大きな支えになります。
今回は、緊張しやすい子どもだからこそ効果的な“安心を生む声掛け”を整理します。
小児患者の“緊張を溶かす”言葉
不安「怖さ」を否定せず“味方になる姿勢”を示す
子どもは「怖がってはいけない」と言われると、余計に不安を感じます。気持ちを受け止める言葉が安心の第一歩です。
● 「ちょっとドキドキするよね。ここに座ってみようか」
● 「怖いよね。でも一緒だから大丈夫だよ」
● 「不安なところがあったら教えてね」
● 「できることをゆっくりやっていこう」
● 「がんばろうじゃなくて、一緒にやってみようね」
「気持ちを理解してもらえた」と感じると、それだけで緊張が和らぎます。
気持ちを否定せず、共感から始める接遇が効果的です。
興味を引き出す“ちょっと楽しい”言い換え術
器具や診療の言葉が恐怖につながる場合は、優しいイメージに変換して伝える工夫が有効です。
● 「お口のお掃除の機械」→「歯をキラキラにするブラシ」
● 「音が鳴るよ」→「ちょっと歌ってるだけだよ」
● 「バイ菌をやっつけるよ」→「歯を守るヒーローが働くよ」
● 「ちょっと我慢してね」→「10数えたら終わるよ」
● 「痛かったら言ってね」→「気になったら合図してね」
言葉を変えるだけで“恐怖対象”が“分かりやすい味方”になります。
子どもの想像力に沿った言葉選びが、安心のカギです。
子ども自身に“コントロールできる感覚”を持たせる
緊張の正体は「何が起きるか分からない不安」です。見通しと選択肢を示すだけで安心度はぐっと高まります。
診療前に「これから○○して、終わったらシールを選べるよ」などの事前案内をすることで、子どもは先の流れを理解できます。また「手を上げたら一回止まるよ」という“合図のルール”を伝えると「コントロールしていいんだ」と思えて緊張が低下します。
一方的な説明ではなく、協力者としての立場を感じてもらうことが大切です。
保護者との協力で“安心の三角形”を作る
小児患者さんは、受付・スタッフ・保護者の関係性から安心を汲み取ります。
● 保護者へ先に簡潔に説明して「味方である」ことを理解してもらう
● 子どもの存在を無視しない。本人にも目線を合わせて話す
● 保護者の不安な表情が子どもの不安を増幅するため配慮する
● 事前に「応援の一言」を保護者へ依頼する
● できたときは一緒にほめる(成功体験を共有)
保護者との連携は安心づくりの最短ルートです。
安心は「子ども」「スタッフ」「保護者」の三者で作ります。

まとめ
小児患者さんの緊張を溶かすには、共感、優しい言い換え、見通しづくり、保護者との連携という4つの柱が重要です。
言葉の工夫は小さくても、子どもにとっては大きな安心材料。緊張が和らげば治療協力もしやすくなり、成功体験の積み重ねが「医院は怖くない場所」という信頼へとつながります。
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