医療現場では、患者様に何かを“お願いする”場面が必ず発生します。
問診票の記入、保険証の提示、手指消毒、待合での過ごし方など、協力していただく行動が多く求められる環境だからこそ、お願いの仕方ひとつで印象や協力度が大きく変わります。行動科学では、人は“強要”されると反発し、“配慮”を示されると協力したくなるという性質があります。
つまり、お願いの言葉選びや順番を変えるだけで、相手の行動がスムーズに促されるのです。
本記事では、患者様に負担感を与えず、自然に協力を得られるお願いの仕方を心理学的視点から解説します。
相手の行動を促す“お願いの仕方”
1. “理由を添えるお願い”は協力を引き出しやすい
行動科学の研究では、「理由があるお願い」は驚くほど協力率が高まることが分かっています。人は“理解できる理由”が示されると納得し、行動しやすくなる生き物です。
医療現場では、お願いの背景を簡単に添えることで、患者様は「協力したほうが良い」と自然に感じるようになります。強制ではなく“意味のある行動”として受け止めてもらえるため、抵抗感が消えやすいのです。
- 「感染対策のため手指消毒をお願いいたします」
- 「診察をスムーズに進めるため、保険証をお預かりします」
- 「混雑緩和のためお席の移動にご協力ください」
- 「正確な診断のため問診票のご記入をお願いいたします」
理由づけは“納得”をつくり、患者様の行動を優しく促す最も効果的な方法です。
2. “選択肢を与えるお願い”は心理的抵抗を減らす
人は選択肢を奪われると反発し、選択権があると協力しやすい傾向があります。これは“選択の自由効果”と呼ばれ、医療接遇でも非常に有効です。
「〇〇してください」だけでは強制に聞こえますが、「〇〇か△△のどちらかでお願いします」と選択肢を添えると、患者様の主体性が保たれ、気持ちよく協力してもらえるようになります。
- 座席移動をお願いする際
- 支払い方法の選択を示す
- 説明のタイミングを選んでいただく
- 書類記入の優先順を選んでもらう
選択肢を与えることで、患者様は“自分で決めた”という感覚を持ち、行動への抵抗が大幅に減少します。
選択肢があるお願いは、患者様に主体性を残しながら協力を促すことができ、不満や反発が出にくいのが大きな特徴です。
3. “ポジティブな表現”は行動意欲を高める
同じお願いでも、ネガティブな言い方とポジティブな言い方では受け取り方が全く異なります。
行動を促すときに否定語を使うと、患者様は“叱られた”“注意された”と感じやすくなり、協力意欲が下がります。
一方、「〜していただけると助かります」「〜していただければ安心です」といった前向きな言い換えは、相手に配慮と優しさを感じさせ、協力のハードルを下げます。
接遇では“どう言うか”が行動意欲を左右します。
4. “感謝を先に伝えるお願い”は協力度を高める
「お願い → 協力 → 感謝」という順番が一般的ですが、心理学的には「感謝 → お願い」の方が協力してもらいやすくなります。
これは“返報性の原理”によるもので、先に感謝を示されると「応えなければ」という気持ちが自然に生まれます。医療現場では、患者様が協力してくれたときだけでなく、“お願いの段階”で感謝を伝えることが大切です。
- 「いつもご協力ありがとうございます。こちらにもご記入をお願いいたします」
- 「ご理解いただき感謝いたします。次にこちらをご確認ください」
- 「ご協力助かっています。あと一つだけお願いできますか?」
- 「ありがとうございます。ではこちらにお掛けください」
お願いの前の“ひと言の感謝”が、患者様の気持ちを柔らかくし、協力しやすい空気を作ります。
先に感謝があるだけで、患者様は「この医院は丁寧だ」と感じ、自然と協力したくなる“良い循環”が生まれます。

まとめ
相手の行動を促すお願いの仕方には、心理学的な根拠があります。
強制するのではなく、理由を添える・選択肢を与える・ポジティブに言い換える・先に感謝を伝えるといった工夫をすることで、患者様は気持ちよく協力してくれます。丁寧なお願いは、医院の印象を高めるだけでなく、患者様の満足度や再来意向にも大きく影響します。
日々の接遇の中で、小さなお願いの仕方から信頼は育っていきます。
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