医療現場での薬の処方や投与は、患者にとって欠かせない治療の一部ですが、その一方でミスや説明不足が訴訟に発展するリスクを常にはらんでいます。薬剤の取り違えや副作用リスクの説明不備は、診療科を問わず起こり得る問題です。特に皮膚科・眼科・歯科のような外来中心のクリニックでも例外ではありません。
処方の間違いは「現場の忙しさ」や「似た薬剤名」など些細な要因で起こりますが、結果として裁判に発展すれば、経済的損失だけでなく医院の信用に大きな傷を残します。
今回は、皮膚科・眼科・歯科など入院施設を持たないクリニックでも現実に起こり得る処方ミスの裁判事例を取り上げます。
医療機関の裁判シリーズ:薬の処方ミス・説明不足による訴訟
判例の概要
ある都市部の皮膚科クリニックでの事例。患者は湿疹の治療を目的に来院し、医師は抗ヒスタミン薬の処方を指示しました。しかし調剤時の確認不足により、別の薬剤(同系統でありながら強い副作用リスクを持つ薬)が処方されてしまいました。服用後、患者に強い倦怠感と肝機能障害が発生し、長期療養を余儀なくされました。
クリニック側は「一般的に使用される薬であり、まれな副作用が出たにすぎない」と主張しました。しかし裁判所は、
- 薬剤名の取り違えはダブルチェック体制を整えていれば防げたこと
- 副作用リスクを十分に説明し、理解を得ていなかったこと
を重視し、約800万円の損害賠償を命じました。
同様に、眼科では点眼薬の取り違えで角膜障害が悪化した事例、歯科では鎮痛薬の過量処方により消化器系障害を招いた事例も報告されています。いずれも「薬の種類や副作用について十分な説明を怠った」「処方記録や同意の証跡がなかった」ことが敗訴の理由になっています。
判決から読み取れる教訓
1. 処方・調剤のダブルチェックが必須
皮膚科・眼科・歯科といった外来診療中心の科でも、「医師が処方したら薬剤師やスタッフが確認する」二重チェック体制を導入しておく必要があります。小規模クリニックだからこそ、確認を一人任せにするとリスクが増します。
2. 副作用説明と記録の徹底
副作用リスクを「まれだから」と軽視せず、患者に説明したことをカルテや同意書に記録することが不可欠です。特に皮膚科の外用薬や眼科の点眼薬、歯科で処方する抗菌薬や鎮痛薬は副作用が軽視されやすいため注意が必要です。
3. 多忙さは免責理由にならない
「忙しくて確認できなかった」という説明は、裁判では通用しません。むしろ患者数が多いクリニックであれば、体制整備やマニュアル化の必要性が強調される傾向にあります。
経営へのインパクト
金銭的損失
今回の判例では約800万円という賠償命令が下されましたが、これに弁護士費用や裁判対応のための時間的コストが加わります。数百万規模でも、クリニック経営には十分な打撃です。
信用の失墜
薬の処方ミスは患者にとって「基本的な医療安全が守られていない」という強い不信感につながります。SNSや口コミを通じて地域に広まれば、新規患者数の減少や既存患者の離脱を招く恐れがあります。
スタッフ士気の低下
処方に関わったスタッフが責められることで、現場全体の雰囲気が悪化します。「また同じことが起きたらどうしよう」という心理的負担がスタッフの離職にもつながりかねません。
医療機関が取るべき対応策
チェック体制の標準化
薬の処方や調剤は、必ず「複数人で確認する」仕組みにします。電子カルテの警告機能や薬剤バーコードの導入も有効です。
説明と同意の仕組み化
副作用リスクは「まれだから省略」ではなく、説明内容を同意書やカルテに残すことが必須です。患者の署名がある文書は、後のトラブル時に大きな防御力になります。
定期的な研修の実施
処方や説明に関する研修は新人教育だけでなく、定期的に行う必要があります。特に外来診療中心の科では「スピード重視」が優先されやすいため、確認手順を見直す機会を設けましょう。
インシデント共有と改善
処方や投薬のヒヤリ・ハットは、隠さず院内で共有し再発防止に活かすことが重要です。オープンな文化が安全性を高め、患者からの信頼にもつながります。

まとめ
皮膚科・眼科・歯科のような外来診療中心のクリニックであっても、薬の処方ミスや説明不足は重大な訴訟リスクとなり得ます。今回の事例が示すのは、小規模な医院でも「体制の不備」と「説明記録の欠如」が裁判での敗訴要因になるという現実です。
「うちの診療科は大丈夫」と思わず、今一度処方・説明のフローを点検し、チェック体制・説明記録・研修を強化することが、訴訟リスクを減らし、患者からの信頼を守る最善策です。
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