クリニックのリスクマネジメントシリーズ:薬の処方ミスを防ぐ仕組みづくり

薬の処方や調剤のミスは、どの診療科でも起こり得るリスクです。皮膚科での外用薬の取り違え、眼科での点眼薬の誤用、歯科での抗菌薬や鎮痛薬の処方誤りなど、小さなミスが重い副作用を招き、裁判に発展することもあります。

実際、説明不足やダブルチェック体制の欠如が敗訴理由とされ、数百万円から数千万円の賠償命令が下された事例も報告されています。

本記事では、薬の処方ミスを防ぐためにクリニックが整えるべき仕組みを整理し、日常の業務にどう落とし込むかを考えます。


目次

1. ダブルチェック体制の導入

薬剤ミスの大半は「人の思い込み」に起因します。似た薬名、慣れによる確認不足、多忙による取り違え――こうしたヒューマンエラーを防ぐには、仕組みとしてのチェックが不可欠です。

こうした二重・三重のチェックを「仕組み化」してしまうことが、最も確実な防止策です。


2. 副作用リスクの説明と記録

薬剤には必ず副作用があります。特に抗菌薬、ステロイド、抗がん剤などは説明不足が訴訟リスクになります。

患者への説明は口頭だけで終わらせず、以下を徹底することが重要です。

裁判において「説明したかどうか」が問われるとき、記録がなければ「説明なし」と判断される可能性が高いのです。記録の有無が医院を守る最大の盾になります。


3. スタッフ研修の定期化

安全管理は日常の習慣づけがすべてです。

「うちは大丈夫」と思っている組織ほどリスクが高まります。定期的に全員がルールを再確認する仕組みが、ヒューマンエラーを減らす第一歩です。


4. ヒヤリ・ハットの共有文化

実際の事故に至らなくても、「冷や汗をかいた」「間違えそうになった」という経験は必ずあります。これを院内で共有する文化を持てるかどうかが安全性の分かれ目です。

こうした積み重ねはスタッフ同士の信頼感を高め、離職防止にもつながります。


5. 経営者としての姿勢

処方ミスを完全になくすことは不可能です。だからこそ、院長・理事長が「防げる仕組みをつくる」「説明と記録を徹底する」という方針を示し続けることが求められます。

税務や労務と同じく、薬剤リスクも「経営課題」です。日常の業務改善やスタッフ教育に投資することが、訴訟リスクを減らし、最終的には医院の信頼を守ることにつながります。


薬の処方ミスや説明不足は、外来中心のクリニックでも他人事ではありません。裁判に至れば数百万円以上の賠償だけでなく、地域での信頼を大きく損ないます。

  • ダブルチェック体制を整える
  • 副作用リスクを説明し、記録を残す
  • 定期的な研修を行う
  • ヒヤリ・ハットを共有し改善する

この4つを実践することが、医院にとって最大の防御策です。日常の小さな確認や記録が、未来の大きなトラブルを防ぎます。

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