日々の診療や経営に追われる中で、就業規則の整備を後回しにしていませんか。
特に規模の小さなクリニックでは、「うちは家族的な雰囲気だから」「トラブルも少ないから」と考え、明文化されたルールを持たないケースが少なくありません。しかし、スタッフが増え、組織が成長していくと、必ずと言ってよいほど「給与」「労働時間」「役割分担」をめぐる課題が表面化します。
そうしたときに拠り所となるのが「就業規則」です。まさに、クリニックにおける「憲法」と言える存在なのです。
就業規則は、クリニックの憲法です
なぜ就業規則が「憲法」なのか
憲法は国の根本的なルールを定めるものです。同じように就業規則は、クリニックで働く全員が従うべき基本のルールを示します。
- 公平性の担保:誰か一人の声や要望で給与や待遇が変わることを防ぐ
- 透明性の確保:基準を明文化することで、不平や疑念を減らす
- 安心感の提供:スタッフが「自分は正しく扱われている」と感じられる
就業規則があることで、院長もスタッフも同じルールの下に立ち、判断や運営がぶれなくなります。
小さなクリニックほど重要
「うちは数人しかいないから不要」と考える院長もいますが、むしろ小規模組織ほどルールは不可欠です。なぜなら、人数が少ない分、ちょっとした不満や不公平感が組織全体に波及しやすいからです。
例えば、残業の取り扱い。
- Aさんは残業代が出ると思っている
- Bさんは「このくらいはサービス残業」と感じている
- 院長は「一律で調整している」
こうした認識の違いが続くと、「自分だけ損をしている」という不満につながり、チームワークが崩れてしまいます。それらが明確になる就業規則があれば、誰もが納得できる基準をもとに話し合うことができます。
就業規則がカバーすべき項目
就業規則は法律上の義務としても重要ですが、実際の運営で必要となる要素は次のようなものです。
- 勤務時間・休憩・休日の取り扱い
- 給与・昇給・賞与・手当の基準
- 評価や昇進に関する考え方
- 服務規律(遅刻・欠勤・副業など)
- ハラスメント防止や懲戒の基準
これらがあいまいだと、トラブルが起きるたびに場当たり的な対応を迫られます。逆に、就業規則に基づけば「規則に沿って対応します」と冷静に答えることができ、院長自身も精神的に守られるのです。
実際に整備・運用するには
就業規則は「作ったら終わり」ではありません。実際に機能させるためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
まず大切なのは、法律に沿った内容になっているかどうかです。労働基準法や各種の労働関連法規は頻繁に改正されるため、専門家である社会保険労務士に相談して整備するのが安心です。ひな型をそのまま使うのではなく、診療時間やスタッフ構成に合わせて調整してもらいましょう。
次に重要なのが「スタッフへの周知」です。どんなに立派な規則を作っても、現場のスタッフが内容を知らなければ意味がありません。紙で配布する、院内掲示する、共有フォルダに置くなど、全員が確認できる方法で周知しましょう。スタッフが自分の労働条件を理解できて初めて、安心感や納得感が生まれます。
さらに、就業規則を変更する際には「従業員代表の意見書」が必要です。トップダウンで一方的に決めるのではなく、スタッフの理解や合意を得るプロセスを踏むことが法律上も求められています。この点を軽視すると、せっかくのルールが不信感の火種になりかねません。
最後に、就業規則は定期的な見直しも欠かせません。クリニックの規模が大きくなったり、勤務形態が変わったりすると、現場に合わない部分が出てきます。また、法改正に追いついていないとトラブルの原因になります。数年に一度は社労士とともに見直しを行い、常に「現場に合ったルール」であることを確認しましょう。
トラブル予防の「安全網」として
就業規則は「問題が起きたときに取り出す書類」ではありません。むしろ「問題が起きないようにする安全網」です。
例えば、
- 賃上げを求める声が出たとき:「就業規則の基準に基づいて検討します」
- シフトの不公平感が出たとき:「規則の取り決め通り調整します」
- 不適切な勤務態度が見られたとき:「服務規律に従い指導します」
このように就業規則があれば、院長が一人で判断を背負う必要がなくなり、「制度に沿った対応」として処理できるようになります。
スタッフとの信頼関係を強めるために
就業規則は、スタッフにとっても安心材料です。「自分の給与や待遇は院長の気分次第ではなく、ルールに基づいている」とわかれば、納得感が高まります。また、新しいスタッフの採用時にも、規則を説明できることで信頼感を与えることができます。

まとめ
就業規則は、クリニックの「憲法」として、スタッフと院長の双方を守るものです。
公平性と透明性を確保し、トラブルを未然に防ぎ、組織の安定を支えます。小さな組織だからこそ、感覚やその場の判断ではなく、明文化されたルールに基づく運営が必要です。就業規則を整備し、スタッフに共有することから、安定した経営と信頼される組織づくりが始まります。
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