クリニック経営において「患者満足度」は、診療技術や最新設備と同じくらい大切な指標です。患者さんが満足して帰るかどうかは、次回の来院や家族・知人への紹介に直結します。
多くの院長がアンケート調査を実施していますが、「満足度を調べて終わり」になってしまっているケースも少なくありません。本当に重要なのは、アンケート結果をどう読み解き、どの部分を改善すれば効果的かを見極めることです。
そこで役立つのがCS(Customer Satisfaction)分析と改善度分析です。
CS分析から見える患者満足度向上のポイント ― 改善度と優先度の活用法
CS分析とは何か
CS分析とは、患者満足度を「重要度」と「満足度」の2軸で整理し、優先的に改善すべき領域を見極める手法です。
- 重要度が高く満足度が低い項目:最優先で改善すべき領域
- 重要度が高く満足度も高い項目:現状維持でOK
- 重要度が低いが満足度が高い項目:過剰品質の可能性があるためバランス調整を検討
- 重要度も満足度も低い項目:優先度は低い
このマトリクスを活用することで、「感覚的に気になる部分」ではなく「データが示す改善効果の高い部分」を特定できます。
今回の分析結果のポイント
あるクリニックで実施したCS分析と改善度分析からは、以下のような結果が示されました。

- 受付対応(改善度11.13、満足度24.0)
最も改善余地が大きい項目です。患者さんが最初に接する部分であり、ここが改善されると全体の印象が大きく向上します。 - スタッフの治療技術(改善度3.89、満足度40.3)
医療行為そのものに関する評価。一定の満足度はあるものの、さらなる強化が求められる領域です。 - イメージ(改善度2.87、満足度37.2)
清潔感や雰囲気などの総合的な印象。外観や院内環境の工夫で改善できる余地があります。
一方で、スタッフの対応(改善度-15.33、満足度40.4)など、マイナス値の項目は改善の必要がない領域です。むしろ現状を維持することで十分効果を発揮していると考えられます。
改善度分析の活用
「満足度が低い=悪い」と捉えるのではなく、「改善すれば効果が大きい領域」と捉えるのが改善度分析の考え方です。院長の感覚やスタッフの印象ではなく、データに基づいて優先順位をつけることで、効率的かつ納得感のある改善が実現できます。
改善度が高い項目にリソースを集中することで、短期間で患者満足度全体を底上げできるのが大きなメリットです。
改善策の具体例
実際に今回の結果を踏まえて考えられる改善策は以下の通りです。
- 受付対応
接遇研修の導入、待合動線の改善、案内表示のわかりやすさを見直す。特に初診患者にとって受付の印象はクリニック全体の印象を左右します。 - スタッフの治療技術
定期的な勉強会やロールプレイングを実施し、診療の質を標準化。ベテランスタッフが若手を指導する仕組みを整えることも有効です。 - イメージ
院内清掃の徹底、観葉植物やアートの設置、BGMや照明の調整など、来院した瞬間の印象を左右する要素を磨き上げます。ユニフォームの刷新も効果的です。
これらの改善は大きなコストをかけずに実施できるものも多く、意識次第で即日スタートできる取り組みもあります。
データを文化にする
CS分析や改善度は一度だけの取り組みでは意味がありません。定期的にアンケートを実施し、改善サイクルを回すことで、データに基づく経営文化が根付いていきます。
患者さんの声を可視化し、それをスタッフ全員で共有することで、「改善すべき点」が共通認識となり、現場全体のベクトルが揃います。この積み重ねが患者満足度の安定的な向上と、リピート率・紹介数の増加につながります。

まとめ
患者満足度を高めるには、感覚ではなくデータに基づくアプローチが欠かせません。
CS分析と改善度分析を活用することで、限られた時間やリソースを「最も効果のある部分」に集中させることができます。
とくに、受付対応やスタッフの治療技術など、改善度の高い項目を優先的に改善することは、効率的に満足度を高める最短ルートです。
逆に、課題を放置したり、改善の方向性を誤ったまま取り組みを続けると、理想のクリニック像に近づくどころか、遠回りしてしまう危険性があります。
データは「ここを改善すれば確実に成果が出る」という道しるべを示してくれます。
その道しるべを信じて一歩ずつ改善を積み重ねることが、患者さんに愛され、スタッフに信頼されるクリニックへの最短の道なのです。
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