はじめに
バランススコアカード(BSC)を導入するにあたり、明確な戦略を描くためには、「何が自院の課題なのか」を洗い出し、それをどのように解決へ導くかを可視化することが不可欠です。今回は、その中核となる「戦略課題の抽出」と「戦略マップの作成」について解説します。
戦略マップとは何か?
戦略マップとは、BSCの4つの視点(①財務 ②患者(顧客)③業務プロセス ④人材と学習)における主要な戦略課題を関連づけ、因果関係として整理・可視化したものです。いわば、クリニック全体の経営戦略を「図解」するための設計図であり、組織全体で「目指すべき方向」を共有するための強力なツールです。
たとえば、財務の「医業収入を安定的に伸ばす」という目標があるとしましょう。そのためには、患者(顧客)の「再来院率の向上」や「紹介数の増加」が必要となり、さらにその背景には「予約管理の最適化」や「スタッフ対応の質の向上」などの業務プロセスが関係しています。そして、こうした改善を支えるのが、「スタッフ教育制度」や「理念の共有」といった人材育成の取り組みです。

このように、「成果の出る順番=戦略の筋道」を示すのが戦略マップなのです。
戦略課題はどう抽出する?
前回の記事でご紹介したSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)をもとに、自院の「あるべき姿」と「現状」とのギャップを洗い出すことで、戦略課題が浮かび上がります。
たとえば…
- 強み:専門的な治療技術
- 機会:地域に競合が少ない
- 弱み:スタッフの接遇スキルにバラつき
- 脅威:自費診療の市場拡大に乗り遅れている
こうした状況をもとに、「もっと自費診療の比率を高めたい」「患者満足度を高めたい」といった目標を立て、それに向けた課題(例:自費カウンセリング体制の強化、スタッフ教育の標準化など)をBSCの4視点に整理していきます。
このステップでは、「現場の肌感覚」や「患者アンケートの声」なども加味し、経営層だけでなく現場スタッフとの対話を通じて課題を抽出することが重要です。
院長の想いを“行動”に落とし込む
戦略マップを作る最大の意義は、単なる経営方針を「日々の行動」にまで落とし込む点にあります。
「再来率を高めたい」ではなく、
- 誰が
- いつまでに
- どのような方法で
- どの指標を改善し
- どの成果を目指すのか
このような具体的な構造を視覚的にまとめたものが戦略マップです。特に医療現場のように、多職種が関わる組織では、この“見える化”がなければ意思統一は困難です。
BSCの導入支援では、当社でもこのマップ作成にかなりの時間をかけます。というのも、ここを曖昧にすると、次のKPI設計やアクションプランがすべて形骸化する恐れがあるからです。

院内での共有と浸透がカギ
完成した戦略マップは、ぜひ紙やデジタルにしてスタッフルーム等に掲示しましょう。毎朝の朝礼や月例ミーティングで確認するのも効果的です。
重要なのは「一度作って終わり」にしないこと。環境変化や人員体制の変化に応じて、定期的に見直す柔軟さも必要です。
まとめ|未来に向けた“橋”をかける工程
戦略マップとは、「理念と現場」をつなぐ橋のようなものです。
院長の頭の中にあるビジョンを、スタッフ全員が「同じ景色」として理解し、行動に移せるようにすること。それが、この第4ステップの最大の目的です。
次回は、こうして整理された戦略課題をもとに、どのように「評価指標(KPI)」を設定していくのかを詳しく解説します。
次回予告
次回は、戦略マップで見えてきた方向性をさらに深掘りし、
医院の成長に直結する「重要成功要因(CSF)」をどう洗い出すかを解説します。
接遇・人材・組織力といった“成果のカギ”を、実例を交えて整理していきましょう。
▶ 続いて【第5回:評価指標(KPI)の設定とその考え方】を見る
▶ 一度、【第3回: SWOT分析とは?】に戻る
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