個々のスタッフが力を発揮していても、組織全体の雰囲気が悪ければ成果は半減してしまいます。逆に、心理的に安心できる職場では、スタッフ同士が自然に助け合い、改善や提案が活発になります。
今回は「心理的安全性」をキーワードに、クリニックの組織づくりに役立つ心理学的アプローチを解説します。
組織づくりと心理的安全性
1. 心理的安全性とは何か
ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」とは、組織の中で「自分の意見や気づきを安心して発言できる状態」を意味します。医療現場のように小さなミスが大きな影響を与える職場では、特に重要な概念です。
心理的安全性がある組織の特徴
- 上司に対しても自由に質問や提案ができる
- ミスを共有しても責められず、改善の糧にできる
- 自分の意見が尊重されていると実感できる
この安心感が、組織の学習能力や成長スピードを大きく高めます。
2. 医療現場における実践例
クリニックでは、患者対応・診療補助・事務作業など、細かな連携が欠かせません。心理的安全性が低いと「間違いを指摘できない」「困っていても相談できない」という状況が生まれます。
実践例
- カンファレンスや朝礼で「昨日の小さな気づき」を共有する
- 院長が自ら「自分も学びの途中」と示して、失敗を許容する雰囲気をつくる
- トラブルが起きた際は「誰のせいか」ではなく「どう改善するか」を軸に話し合う
これにより、スタッフ同士が自然に助け合う文化が根づいていきます。
3. 公平性と透明性が信頼を育てる
心理的安全性は「公平性」と「透明性」に支えられます。不透明な評価や偏った扱いは、発言や挑戦を妨げてしまうからです。
公平性を保つ工夫
- ルールや評価基準をあらかじめ全員に示す
- 業務分担やシフトの決定理由を説明する
- 成果や貢献を「見える化」して称賛する
「誰もが同じ土台に立っている」という認識があるからこそ、安心して意見を出せるようになります。
4. 院長のリーダーシップがカギ
心理的安全性は自然に生まれるものではなく、リーダーの姿勢によって作られます。特にクリニックでは院長の一言や態度が大きな影響力を持ちます。
リーダーが意識すべきこと
- 発言を否定せずにまず受け止める
- 「ありがとう」「助かった」と感謝を伝える
- 意見や提案に対して「なぜそう思うの?」と関心を示す
リーダーのこうした姿勢がスタッフに伝わることで、職場全体の空気が柔らかくなり、発言や挑戦が活性化します。
5. 心理的安全性が生む組織の成果
心理的に安心できる環境は、単なる雰囲気づくりではありません。経営的にも大きな成果をもたらします。
期待できる効果
- 業務改善のアイデアが出やすくなる
- 離職率の低下、定着率の向上
- 患者対応の質が上がり、満足度が高まる
つまり心理的安全性は「働きやすさ」を超えて、クリニックの経営基盤そのものを強化するものなのです。

まとめ
クリニックの組織づくりには「心理的安全性」を中心に据えることが欠かせません。
- 安心して発言できる環境を整える
- 小さな気づきやミスを共有する習慣を持つ
- 公平性と透明性で信頼を築く
- 院長のリーダーシップで雰囲気を形づくる
- 組織全体の成果として、改善と定着につなげる
心理学をベースにした組織づくりは、院長のリーダーシップを支える強力な武器になります。
次回は「院長自身の心理マネジメント」を取り上げます。経営者としてのストレスやプレッシャーをどう整えるか、セルフケアの視点から解説します。
▶クリニックと心理学 シリーズ(全5回)のまとめページに戻る
【無料】75%公開版チェックリストをご提供中
今回の連載では、ノルマや報奨金といった「数値の扱い方」を整理し、健全な目標設定の考え方を解説しています。
その次の一歩として、経営全体を体系的に整理できる「BSC(バランス・スコアカード)75%公開版チェックリスト」を無料でご提供しています。
数値だけに偏らない経営課題の整理や、スタッフと共有できる指標づくりの土台としてぜひご活用ください。
ご希望の方は、下記より資料請求または無料相談にお進みください。
▶BSC(バランススコアカード)については、こちらのまとめからご覧ください。
▶ 「経営戦略」カテゴリの関連記事を探す
▶ カテゴリ検索・人気記事などコラムのトップへ戻る
グロースビジョンでは読み物として得た知見を、実際の医院改善に活かすための【無料ツール・サポート】をご用意しています。
先生の大切な1歩を支援します。お気軽にどうぞ。
接遇5原則チェックシート
接遇の基準をシンプルに可視化。
院内研修や個別指導に活用
満足度調査ツール 半年無料
満足度と改善点を数値化できる
E-Pサーベイが半年無料
BSCチェックリスト
医業収入UPの戦略マップづくりに
無料でも75%公開してます

