税務調査と聞くと、多くの院長先生は「うちにも来るのだろうか」「何を見られるのか」と不安を感じるかもしれません。特に医療法人化したクリニックでは、税務署からの調査対象になる可能性は決して低くありません。
赤字だから安心、規模が小さいから来ない、というのは大きな誤解です。むしろ「適正に管理されているか」を確認する目的で、幅広いクリニックが調査の対象となります。
今回は、クリニックにおける税務調査の基本的な流れと備えについて整理します。
クリニックの税金⑧|税務調査への備え
1. 医療機税務調査は誰にでも来る
税務調査は、特定の問題がある法人だけを狙って行われるわけではありません。調査官は、売上規模、利益率、過去の申告状況などを総合的に判断して訪問先を決定します。したがって、業績が好調な医院はもちろん、赤字を計上している医院でも調査が入ることがあります。
つまり「うちは関係ない」と思っていると、いざ調査が来たときに慌てることになるのです。
調査で見られる主なポイント
調査官が注目するのは、次のような部分です。
- 売上計上の漏れ
特に自費診療や物販は、現金売上や予約システムとの突合で漏れが指摘されやすい分野です。レセプトは比較的正確に管理されますが、自費は「現金だから」「領収書を後でまとめるから」といった理由でズレが生じやすいのです。 - 役員報酬や家族への給与
税務署は「合理的な給与かどうか」を厳しく見ています。院長自身の報酬はもちろん、奥様やご家族に給与を支払っている場合、業務実態が伴っているかが問われます。 - 交際費や福利厚生費
院長先生の個人的な飲食や買い物が経費に含まれていないか。スタッフへの福利厚生と称しながら実質的に個人利用になっていないか。こうした点も重点的にチェックされます。 - 医療機器や設備投資の処理
高額な医療機器を導入する際の耐用年数や償却方法が正しく処理されているか。リース契約の内容が経費計上ルールに合致しているか。
準備しておくべき資料
調査官は決算書だけを確認するわけではありません。裏付けとなる資料を求められるため、日頃から次の書類を整備しておくことが大切です。
- 領収書・請求書・契約書:日付・金額・取引先が明確に記載されたもの
- 現金出納帳:現金売上や支出を漏れなく記録
- 預金通帳の写し:入出金の流れを追えるよう整理
- レセプト・予約システムとの突合表:診療報酬や自費収入が正しく申告されているかを示す
- 給与台帳や勤怠記録:家族やスタッフに支払う給与の正当性を証明
これらを日常的に整理しておけば、調査時にバタバタ探す必要がなくなります。
院長の姿勢が問われる
税務調査では「数字」だけでなく「院長の姿勢」も見られています。ごまかそうとしたり、税理士に丸投げで何も答えられなかったりすると、調査官は不信感を持ちやすくなります。逆に、院長が基本的な数字を理解しており、正しく説明できると「管理が行き届いている」と評価され、調査がスムーズに進みます。
院長先生がすべてを詳細に説明する必要はありません。ですが「売上の流れ」「経費の大きな項目」「家族給与の実態」など、最低限の概要は自分の言葉で話せるようにしておくことが安心につながります。
調査後に指摘されやすい事例
実際の税務調査でよくある指摘には、以下のようなものがあります。
- 自費診療の領収書が一部保存されておらず、売上計上が不足している
- 家族への給与が高額すぎ、業務内容と釣り合っていない
- 院長のプライベートな出費を交際費として経費処理していた
- 高額機器の減価償却期間を短く設定していた
いずれも「うっかり」で済ませられない内容です。調査の指摘は追徴課税や加算税につながるため、信用を失うだけでなく資金繰りに大きな影響を及ぼす可能性があります。
普段からできる備え
税務調査は突然やってくるわけではありません。調査の通知が届いた段階で準備するのでは遅く、日常的な管理体制がそのまま結果に表れます。
- 経費の領収書は必ず保存し、内容を明記する
- 自費診療の売上は予約システムやカルテと突合できる形で管理する
- 家族給与は実態に基づき、勤怠や業務内容を記録しておく
- 大きな投資をする際は必ず税理士と相談し、処理を誤らないようにする
これらを習慣化することこそ、最大の「税務調査への備え」と言えます。

まとめ
税務調査は特別なことではなく、どのクリニックにも起こり得る日常的な出来事です。怖がる必要はありませんが、普段からの会計処理や資料管理の姿勢がそのまま問われます。
「調査で問題を見つけられるかどうか」ではなく、「普段の経営管理を確認する場」と捉えれば、院長先生にとっても良い学びの機会になります。しっかり準備を整えておけば、調査は怖いものではありません。
※税金の取扱いは法改正や解釈変更が随時行われます。必ず顧問税理士にご確認ください。
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