患者さんとのコミュニケーションにおいて、言葉以上に印象を左右するのが「視線」です。視線の向け方・動かし方・留め方は、無意識のうちに“安心”“警戒”“圧迫感”として伝わります。
医療機関では、患者さんは緊張や不安を抱えていることが多く、小さな視線の動作でも心理に大きな影響を与えます。視線は接遇の中でも強い非言語メッセージ。相手をしっかり見ているつもりでも、視線の送り方を誤ると「冷たい」「急かされている」と感じさせてしまうことがあります。
今回は、視線で“優しさ”を伝える技術をお伝えします。
視線の配り方で「優しさ」を伝える技術
患者さんの緊張をほどく「柔らかい視線」
視線が鋭くなってしまう原因は、緊張・慌ただしさ・意識の偏りにあります。ほんの少し目つきを柔らかくするだけで、患者さんの安心感は大きく変わります。ポイントは“見つめすぎない”“視線を下げる”“まぶたの緊張を抜く”の3つです。
● 視線はまっすぐより「少し柔らかめ」を意識
● 長時間の凝視は不安を強めるので注意
● 患者さんが話しているときは瞬きを自然に
● 目を見すぎず、時々視線を外すのが自然
● 眉間に力が入ると“怒っている表情”に見える
視線の柔らかさは、表情以上に優しさを伝えてくれます。
優しい視線は「あなたの話を受け止めています」というサインです。
多人数の待合でも「全員を見守る視線」
受付は常に複数の患者さんに囲まれる場所です。そのため、一人だけを見続けると他の患者さんに“放置されている”と感じさせてしまうことがあります。視線を全体に配ることで「ちゃんと気付いてくれている」という安心感を生み出せます。
● 話しかけられた人を中心に、周囲にも視線を流す
● 待っている方へ時々目線を向けて“気付いています”を伝える
● 目線だけで「少々お待ちください」の合図にもなる
● 受付横・待合入口・中待合を一定のリズムで見回す
● パソコンに集中しすぎると“無関心”に見えるので要注意
視線の循環は、患者さん全体の安心感をつくる“大事な接遇力”です。
視線の配り方ひとつで、待合の空気は落ち着きます。
“適切な距離感”をつくる視線の使い方
視線は近すぎると威圧的に、遠すぎるとよそよそしく映ります。距離感を整えるためには、視線を向ける時間と位置を調整することが効果的です。
相手が緊張している場合は、少しだけ視線を外しながら応対することで、安心して話しやすくなります。反対に説明が必要な場面では、しっかり目を合わせることで「伝えようとしている姿勢」が伝わります。視線の“強弱”が距離感を自然に整えてくれるのです。
短時間で“感じの良さ”を作る視線ルール
視線を意識すると、受付の印象は驚くほどスムーズに整います。小さなルール化が全体の接遇水準を安定させます。
● 患者さんが来たら必ず一度は目を合わせる
● 案内の際は視線で“方向”を示しながら動く
● パソコン操作中でも合間に視線を上げる
● 受付の2~3m手前で先に目を合わせると安心感が生まれる
● 相手が話し終える瞬間にしっかり視線を向ける
視線の扱いに慣れるほど、患者さんは“丁寧に接してくれている”と感じます。

まとめ
視線は、患者さんの安心感・信頼感にダイレクトに影響する大切な非言語コミュニケーションです。
強すぎる視線は圧迫感を、弱すぎる視線は無関心を生みます。適度にやわらかく、適度に向け、適度に全体へ配る――この視線の使い方が、患者さんの心を自然とほぐし、「この医院は感じがいい」と思っていただける接遇につながります。
視線は“優しさが最も伝わる動作”のひとつです。
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