「権限委譲が大事なのは分かっているが、結局うまくいかない」
多くの医院で聞かれる悩みです。任せたつもりが混乱を招いたり、逆に何も変わらなかったりする背景には、個人の能力以前に“組織設計の問題”が潜んでいます。
権限委譲は単なる仕事の丸投げではなく、役割・判断基準・責任範囲をセットで設計する行為です。
本記事では、権限委譲が機能しない医院に共通するポイントを整理し、組織が自然に回り始めるための視点を解説します。
権限委譲がうまくいかない医院の共通点
1. 「任せた内容」が曖昧なままになっている
権限委譲が失敗する医院では、「ここまで任せる」「ここからは相談」という線引きが不明確なことが多く見られます。その結果、任された側は判断に迷い、動きが止まります。
- 業務範囲が言語化されていない
- 判断基準が共有されていない
- 責任の所在があいまい
- 成果の定義が決まっていない
任せるとは、裁量の範囲を明確にすることです。曖昧さが残るほど、現場は動けなくなります。
2. 権限だけ渡して“支援”が設計されていない
権限委譲は、任せた後のフォローまで含めて初めて成立します。うまくいかない医院では「任せたのだから自己責任」という空気が先に立ち、支援が不足しがちです。
- 定期的な確認の場がない
- 困ったときの相談先が不明
- 判断を振り返る機会がない
- 成功・失敗の共有がされない
権限委譲は“放置”ではありません。支援設計があるからこそ、人は成長します。
3. 院長の判断基準がブラックボックス化している
権限委譲が進まない最大の要因は、院長の「考え方」が共有されていないことです。
最終判断は院長が行うものの、その基準が言語化されていないと、スタッフは「どう判断していいか分からない」状態になります。結果として、すべてが院長待ちになり、委譲したはずの権限が機能しません。
判断基準を言葉にし、共通ルールとして共有することが、組織化の第一歩です。
院長の価値観や優先順位が共有されると、スタッフは自信を持って判断できるようになります。権限委譲とは、判断力を育てるプロセスでもあります。基準を示さずに任せることは、組織に混乱を生む原因になります。
4. 失敗を許容しない空気が残っている
任せた結果の失敗を強く責めてしまうと、次から誰も挑戦しなくなります。権限委譲が形骸化する医院では、この「失敗への反応」が大きなブレーキになっています。
- ミスへの指摘が感情的
- プロセスより結果のみを評価
- 挑戦より無難さが評価される
- 失敗事例が共有されない
権限委譲には“学習の余白”が必要です。安全に失敗できる環境が、組織を強くします。

まとめ
権限委譲がうまくいかない原因は、人の問題ではなく設計の問題であることがほとんどです。
任せる範囲、判断基準、支援体制、失敗への向き合い方。これらを整理することで、権限委譲は初めて機能し始めます。組織が成長する医院ほど、「任せ方」を感覚ではなく仕組みとして捉えています。
権限委譲は、院長が楽になるための手段ではなく、医院を持続的に成長させるための経営戦略です。小さな委譲からでも構いません。判断基準を共有し、支援し、学びに変える。
この積み重ねが、自然に回る組織をつくります。
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